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活動報告

関西フィルハーモニー管弦楽団「第326回定期演奏会」が行われました
2022年4月11日

 アーツサポート関西が助成した関西フィルハーモニー管弦楽団「第326回定期演奏会」が、3月25日、飯守泰次郎指揮により、大阪・福島にあるザ・シンフォニーホールで行われました。
 演奏されたプログラムは、ブルックナーの交響曲「第00番ヘ短調」と、同じくブルックナーの交響曲「第0番ニ短調」の2曲。ブルックナーの交響曲は1番から9番までが良く知られていますが、実は、それ以外にも普段あまり演奏されることが少ない第00番と第0番の2曲が存在しています。
 関西フィルハーモニー管弦楽団は、2011年から指揮者・飯守泰次郎氏とともに毎年1曲ずつブルックナーの交響曲を演奏し、全交響曲を演奏する、いわゆるチクルスに10年をかけて挑みました。本来であれば、チクルスの完成を飾るこのプログラムは、2020年の創立50周年の節目に行われる予定でしたが、コロナの影響でそれが延期になっていたものです。
 最初に演奏された「第00番」はブルックナーが初めて手掛けた1863年の交響曲で、作曲を学んでいた師から芳しい評価が得られなかったため、手元において生涯封印したとされます。晩年のブルックナーにみられる静かに鳴り響く荘厳な調べではなく、オーケストレーションの豊穣な小片がいくつもコラージュされた若きチャレンジ精神のようなものが垣間見え、ブルックナーのイメージが刷新された気がしました。
 「第0番」は、1869年頃の作曲の曲で、実は彼が1865年に作曲した交響曲第1番よりも後に完成したことがわかっています。1872年~73年頃に当時著名な指揮者の前で試演をした際、その批評に落胆したブルックナーは譜面の最初のページに自ら「無効」と書き込み、こちらも封印してしまいます。しかし、死の前年の1895年に、この楽譜を「第0番」として博物館に贈呈しています。
 この作品も、私たちが良く知る、天にむけて永遠の祈りを捧げるかのようなブルックナーの交響曲の厳かな響きとは対照的に、若い躍動感と駆け抜けていく疾走感が際立つエネルギッシュな曲で、当時、これがなぜ高く評価されなかったのか不思議に思いました。
 今回のプログラムは、本来であればオーケストラ創立50周年の記念の年に演奏されるものでもあったためか、演奏からは、指揮者の飯守泰次郎氏およびオーケストラのメンバーたちの熱き想いと情熱がほとばしるように伝わってきて、まさに圧巻の演奏会でした。演奏後には、指揮者の飯守氏がカーテンコール中に舞台に倒れ込んでしまうことにもなり、その壮絶な完全燃焼の姿は、その場にいた観客およびオーケストラのメンバーたちのさらなる感動を呼びました。
 今後もこうした隠れた名曲の発掘が、行われていくことを願いたいと思います。

©S. Yamamoto

©S. Yamamoto

©S. Yamamoto

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