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活動報告

三原聡一郎「空気の研究2022」が「KYOTO STEAM 2022 国際アートコンペティション」で展示されました
2022年3月20日

 アーツサポート関西が2021年度「日本電通メディアアート支援寄金」から助成した三原聡一郎さんの作品《空気の研究2022》が、京都市京セラ美術館で2022年1月29日~2月13日に開催された「KYOTO STEAM 2022国際アートコンペティション」展にて展示され、訪れた多くの方が実際に作品を手に取って体験しました。
 KYOTO STEAM 2022は、歴史と伝統に支えられて芸術文化と科学技術を育んできた京都において、科学・技術・芸術の3分野の掛け合わせによって、「知」と「感性」の新たな可能性と価値観をグローバルに発信していくことを目指したプロジェクトで、さまざまなプログラムから構成されています。
 その一環として行われた展覧会「国際アートコンペティション」は、公募で選ばれたアーティストと企業・研究機関がコラボ―レーションし、そこから生まれた優れたアート作品を表彰するアートコンペティションで、国内では他に類をみないものです。今回の公募には41の企業・研究機関と111の作品プランの応募があり、その中からマッチングで選ばれた11組の企業およびアーティストが現代アート作品の制作を手掛け、展覧会で展示しました。
 三原聡一郎さんは、2018年度にアーツサポート関西の支援を受けて制作した作品《moids+∞》などが高く評価され、2020年度Nissan Art Awardのファイナリストに選ばれるなど注目を集めるアーティストで、今回のアートコンペティションではmui lab株式会社と組んでプロジェクトに参加しました。mui lab社は、Calm Technology(穏やかなテクノロジー)をテーマに、人とテクノロジーの自然なかかわりを提案する情報デバイスなどを手掛けている会社で、三原さんは同社の製品mui boardを使った体験型の作品「空気の研究 2022」を制作し、展覧会で展示しました。
 mui boardは、表面にボタンやスイッチ類が一切ない、見た目は素朴な木片のような外観を持つ情報端末で、表面の木目を透過する形でデジタル情報が表示されます。鑑賞者は、天井から吊り下げられた大きな円筒形の紗幕で仕切られた空間に入り、そこに据え付けられた円形のベンチに腰をかけ、膝のうえにmui boardを置きます。座った円形のベンチは左右に回転するようになっていて、ベンチが動くとmui board上に地球上の膨大な数の都市の座標が表示され、動きを止めると任意の都市が選択されます。ボードの表面には、選択された都市の気象データやピクセル化された街の風景などが表示され、鑑賞者は、座ったまま行う微細な動きによって世界中の都市の状況にリアルタイムでアクセスできるようになります。
 現代はスマホなどの端末でリアルタイムに世界の状況に触れることがあたりまえの時代ですが、この作品は、方位磁石や羅針盤を思わせるベンチの形状と、それを鑑賞者がアナログで任意に動かしながら地球上のひとつの座標とシンクロさせる行為によって、鑑賞者の身体と遠く離れた都市とを隔てる物理的な距離感、あるいは、その距離を充たしている「空気」の存在 ― 作品タイトルでも示されている ― に意識を向けさせることで、インターネットにおいて普段ほとんど感じられることのないモノや存在の物理的な広がりや距離を、私たちの想像力の中に介入させるような作品であるように思いました。