野村由香さんがグループ展「transmit program 2022」に参加しました
2022年7月27日
現代美術アーティストの野村由香さんが参加したグループ展「transmit program 2022」が、2022年4月16日~6月26日にかけて京都のギャラリー@KCUA(アクア)で開催されました。
野村さんは、今年度アーツサポート関西が支援するアーティストのひとり。岐阜県に生まれ、京都市立芸術大学で彫刻を学び、在学中にロンドンのロイヤル・カレッジ・オブ・アートに交換留学をした経験をお持ちです。
ギャラリー@KUCAは、京都市立芸術大学が運営するギャラリーで、世界遺産・二条城の前という素晴らしいロケーションにあって、学生や卒業生のみならず国内外の水準の高い現代美術作品を見せるスペースとして関西のアートファンには知られた存在です。
展覧会「transmit program」は、京都市立芸術大学および同大学院を卒業(修了)して間もない若手アーティストの中から、同ギャラリーが今最も注目するアーティストを選んで紹介する展覧会で、毎年行われています。今年開催された展覧会には、野村さんのほか、画家の阪本結さん、メディア・アートの小松千倫さんの3名のアーティストが参加しました。
本展で野村さんが展示した作品は、人間のサイズをはるかにしのぐ泥でできた巨大な球体の塊。会場に入ると、文字通りそれが目の前に立ちはだかり、その存在感に圧倒されます。床には、その巨大な泥の塊を何らかの方法で転がしてできたと思われる泥の痕跡があちらこちらに見てとれ、その床の「汚れ」と、泥の塊の表面のごつごつとした表情が、白く清潔に整えられた展示空間に大きな「異物感」とともに、有機的な生命の力を感じさせます。
この巨大な泥の量塊は、空間そのものを「作品」として見立てるインスタレーション作品を成すもので、野村さんはそれに「池のかめが顔をだして潜る」というタイトルをつけています。
「私の家の近所に、ため池があります。そこは丘に上がる途中の静かな場所で、一見変化のない景色は静止しているかのように感じますが、実際には池に映る雲は動き、水面は時折、かめや鯉、釣り人の垂れた糸によって小さく波打ち、微かな変化が続いています。私はそうした時間の流れを確認するためによく池に行きます。」(展覧会に寄せられた野村さんのテキストより)
耳をすまし、目をこらして周りを見れば、普段あまり意識を向けていないもののなかに、小さな変化があり、それは時には美しく、また、生の意味につながる大きな流れを感じさせるものとなる・・・。野村さんは、そうした感覚のよりどころを探る確認作業のようなものが、自身の作品制作なのかもしれないと述べています。
この巨大な球体の塊を形作る泥は、ため池の底から、この場所に運ばれてきたのでしょうか? そして泥の塊を床の上を転がす行為は、どんな意味へとつながっていくのでしょうか?
野村さんの展示空間に身を置き、展示作業の前はきっとなかったはずの床のカーペットの汚れや、泥が乾き、ひび割れてポロポロと剥がれ落ちる巨大な球体の表面を見ながら、すべてをその懐の内に包み込む大きな自然の摂理の存在に触れたように感じました。 ※展示を紹介する動画がこちらからご覧いただけます。
展覧会「transmit program 2022」エントランス風景 撮影:来田猛
野村由香《池のかめが顔をだして潜る》 展示風景 撮影:来田猛
野村由香《池のかめが顔をだして潜る》 作品詳細 撮影:来田猛
野村由香《池のかめが顔をだして潜る》 作品詳細 撮影:来田猛
野村由香《池のかめが顔をだして潜る》 作品詳細 撮影:来田猛