曽根知 コンテンポラリーダンス公演「No Man’s Land」が開催されました
2021年11月30日
京都とイスラエルを拠点に活動するコンテンポラリーダンサーの曽根知さんのダンス公演「No Man’s Land」が、10月3日にロームシアター京都ノースホールで開催されました。
曽根知さんは、幼少よりクラシックバレエを学び、バレエダンサーとしても活躍しておりましたが、2008年にイスラエルに渡り、コンテンポラリーダンスの活動を本格化させます。その後、日本・イスラエル国際ダンスプロジェクトを立ち上げて継続的な取り組みを行うほか、イスラエル人振付家やダンサーらと共に公演の企画、作品の振り付け、出演を行うなど、日本とイスラエルの双方で精力的に活躍されています。
今回の公演はアーツサポート関西の助成を受けて行われるもので、2015年にイスラエルで初演された「Mobius」、2020年に舞台作品としてイスラエルで初演され今回は映像作品として公開された「No Man’s Land」、そして今年の8月にポーランドで初演された「Written in the dressing room」の3作品で構成されたプログラムとなりました。
最初の作品「Mobius」は、曽根さんの振付による作品で、ダンサーの金愛珠さんがソロで踊りました。曽根さんのテキストによれば、矛盾という概念を扱った作品で、反戦運動として抗議する者たち自身の暴力と憎悪といった、メディアで見せられるイデオロギー的な矛盾や問題への言及がなされています。重苦しい雰囲気の中で、身体の基本的な動きにフォーカスしたプリミティブな印象を受けました。
2作品目の「No Man’s Land」は、一転して雰囲気が変わり、ある男の日常の一角が描かれます。四方が壁に囲まれた小部屋の中で、そこに置かれたカウチで目覚めるひとりの男。手がとどくところにある電気湯沸かし器に手を伸ばそうとすると、おかしな動作をしはじめ、そのうちカウチが動き出し、植物が伸びてきて、男はどたばたの中、おもわず自然と体全体でダンスを踊りだす・・・。ユーモアとビートの効いた音楽がとても新鮮でした。
最後の「Written in the dressing room」は今年ポーランドで初演された、コロナ禍の中で生まれた作品です。曽根さんがソロで踊りました。頭に不思議な「物体」が付着したひとりの女性が、空気の流れや、時間の経過に翻弄されるかのように、しなだれ、うっぷし、飛び跳ね、駆け回る、といいった、何かに突き動かされるような身体の動きを見せます。この作品に寄せたテキストで曽根さんは「この作品では、期待という概念を、振付家や観客からダンサーへの期待に反映させ表現することを試みている」と書いていて、観客の「期待」に反応しながら踊りつつも、しかし同時に「期待に応えながら、快適で幸せに生きる方法を提案した。私は他人の期待のために踊るのではなく、踊りたいから踊るのだ」とも述べていて、この作品自体がコロナ禍におけるアーティストによる力強いステートメントのように感じました。
全体として、コンテンポラリーダンスの通常の公演で感じられる雰囲気とは何か違う、新鮮な要素が随所に感じられて、それらが表現に対する曽根さんのチャレンジ精神のあらわれのように思いました。
No man's Land 振付・出演 アビダン・ベン・ギアト 写真:井上 嘉和
Written in the dressing room 振付・出演 曽根 知 写真:井上 嘉和