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活動報告

劇団五期会「第74回定期公演The Merchant of ZIPANG」が行われました
2022年1月6日

アーツサポート関西が今年度助成する劇団五期会による第74回定期公演「The Merchant of ZIPANG」が、12月3日~5日にかけて、大阪のABCホールにて全4回公演の日程で行われました。

劇団五期会はNHKの専属劇団であった大阪放送劇団を母体として1973年に創設された劇団で、来年2023年に50周年を迎えます。舞台での演劇公演を中心に活動しつつ、メンバーはテレビドラマやCMなどでも活躍しており、放送で培ったセリフ術や発声術を重視する良き伝統を受け継ぐ、大阪のいわゆる「新劇」界の中心的な存在として知られています。

劇団の第74回定期公演として行われた今回の「The Merchant of ZIPANG」は、シェイクスピアの「ヴェニスの商人」をもとに、舞台をヴェニスから、交易で栄えた16世紀後半の商人のまち難波に移し、人間の業や流転する人生の儚さをシェイクスピアの巧みな描写で描いた作品です。

物語は、侍・婆沙羅の次郎が、想いを寄せる琴姫に求婚するため、親友の商人・安徳から金を借りる場面からはじまります。安徳は、親友の頼みをなんとか叶えたいと考えますが、全財産は航海中の船にあって、金を工面することができません。そこで安徳は、堺に住む悪名高い高利貸しの沙六に金を借りに行きます。沙六の物部氏と安徳の曽我氏は長年反目し合ってきたライバルで、商売仇の安徳にいつしか復讐を果たそうと機会をうかがっていた沙六は、金を貸すことを承諾する条件に、金を返せなければ、安徳の体の肉を一貫目切り取って沙六に与えるという約束をさせます。

安徳はよもや金を返せなくなるとは思わずに約束を取り交わし、借りた金を次郎に渡します。一方、次郎が想いを寄せる琴姫は、父の遺言により、求婚する者に金・銀・鉛の3つの箱から箱を選ばせて、正しい箱を選んだ者と結婚するという謎解きを課し、すでに多くの者がその挑戦に失敗していました。

琴姫を訪ねてやってきた次郎は、琴姫のヒントをたよりに見事に正しい箱を選び、二人はめでたく結ばれます。琴姫は愛の証として、次郎に指輪を渡し、何があっても失くしてはならないと固く誓わせます。そこに安徳の商船が難破したとの知らせがとどき、事態は暗転。事の次第を次郎から聞いた琴姫は、安徳を救うために必要な金を次郎に渡し、すぐに友を救いにいくよう促します。そして、琴姫自身も次郎に知られぬようその後を追います。

難波に戻った次郎は、捕らえられて裁判にかけられる安徳と再会します。そこに若くて優秀な判官に変装した琴姫が登場し、その裁判を裁くことになります。判官に変装した琴姫は、復讐の絶好の機会の到来を喜ぶ沙六に対して、借りた金以上の額を次郎から受け取り慈悲の心を示すことを諭しますが、沙六は拒絶し、肉を要求します。判官は、約束通り肉を与えるが、ただし血を一滴も流してはならぬと伝え、それを聞いた沙六はそれは不可能であるとして金を受け取ろうとしますが、判官は一度拒絶した金を受け取ることはできないとし、さらに安徳を殺そうとした罪で沙六を追放します。

結局、沙六はみなの慈悲で助けられますが、判官に変装した琴姫は、次郎に指輪をくれとしつこくせがみ、次郎は根負けして指輪を渡してしまいます。琴姫の元に戻った次郎に、琴姫は大切な指輪を失くしたことを叱責しますが、自分が判官に変装していたことをうちあけ、みなに笑いが起こります。また、難破の知らせを受けていた安徳の船はすべて無事であったことがわかり、物語は大団円を迎えます。

舞台はヴェニスから大阪の難波へと変わり、登場人物も日本の商人や侍に置き変わりましたが、ストーリーはほぼシェイクスピアの原作通りに進行し、世間から強欲のそしりを受け鬱屈した沙六(シャイロック)の積年の恨みと業の深さ、そして友人への愛のためにすべてを失う安徳(アントーニオ)の生の儚さが、影と光の強烈なコントラストで描かれる一方、随所にちりばめられたユーモアの要素が作品全体をひきたてているように感じました。

コロナ禍で、演劇公演も大変な苦境に陥っていますが、ぜひ今後とも、これまで培ってきたものを守りながら活動を続けていってもらいたいと思いました。