おおしまたくろう「おおしまたくろう楽器展#2 滑琴の耳奏耳」が開催されました
2022年6月1日
アーツサポート関西は、2017年に日本電通株式会社よりお寄せいただいた寄付をもとに「日本電通メディアアート支援寄金」を設け、関西で活動するメディア・アーティストを支援してきました。その最終年度となる2021年度支援アーティストのひとり、おおしまたくろうさんが、京都のパララックス・レコードにて個展「おおしまたくろう楽器展#2 滑琴の耳奏耳(かっきんのみみそうじ)」を開催しました。
おおしまさんは、多くのメディア・アーティストを輩出している情報科学芸術大学院大学(IAMAS)でメディアアートを学び、現在は京都を拠点に、おもに音を奏でる装置としてのアート作品を手掛け、注目されています。
おおしまさんの作品の特徴は、決してかしこまった「芸術作品」という趣ではなく、日常の身近なものに少し手を加え、「音」を介して、どこか異質な状態を生み出すようなものであること。おおしまさんは、それを「ノイズ」と呼びます。私たちは普段、ノイズを雑音として排除しようとしますが、常に何かに付随して発生するノイズは、時には、ノイズが発生する本体を別の角度からとらえる新たな視点をもたらすものでもあるかもしれません。
おおしまさんは、アーツサポート関西の助成金で、以前から取り組んでいるスケートボードとエレキギターを融合した「滑琴(かっきん)」と自らが呼ぶ、楽器のような作品について、部品の強度を高めるなどの改良をはかりました。構造は、スケートボードの下部にとりつけられたギターの弦が、走りながら路面の凹凸を拾い、その音がランドセルのように背負ったスピーカーが鳴り響かせるもの。道路にはマンホールや段差などのさまざまな「表情」がありますが、そういった普段私たちが注意を払うことのない「街のもうひとつのリアルな姿」がこの作品を介して立ち上がってきます。
また、おおしまさんは、今回の助成金を使って、ランドセル型スピーカーに耳型の巨大なマイクロフォンをとりつけ、「滑琴」が奏でる(がなりたてる)サウンドを拾ってネットに配信する機能も新たに追加し、それにより、その場にいなくとも、この作品のプレイにより多くの人々がリアルタイムにアクセスできる社会的な広がりも生まれました。
スケートボードとエレキギターという、異種類の存在を組み合わせて、ユーモアあふれる風合いをもつアート作品を生み出すおおしまさん。おおしまさんの今後の活躍に大いに期待したいと思います。
アーティストのおおしまたくろうさん
自作の《滑琴》に乗ってライドするおおしまさん