【活動報告】モンゴルズシアターカンパニー(演劇)
2016年9月8日
活動概要:モンゴルズシアターカンパニーは、特定の団員を持たず、公演ごとにふさわしいメンバーを配置するという方法で、様々な場所で公演を行うユニットです。「鼠-2016-」は2015年日本劇作家協会主催の短編演劇祭「劇王天下統一大会2015」で唯一関西代表に選ばれて上演された作品「鼠」を、若手演出家の雄―笠井友仁を迎えて長編作品として再編成されたものです。
スタッフの視察報告:会場となる大阪市中崎町のイロリムラプチホールは、入ってまずその小ささに驚かされます。舞台には大道具はなく、小さなホワイトキューブに約20名程度の客席がひな壇に設けられていました。大きな劇場では表現できなかった地下鉄のホーム下の雰囲気を演出するために、この劇場が選ばれたようです。前回の公演で400名もの来場者があったこともあり、公演は2週間に及び全18回上演されました。
ストーリーは、ある春の日の午後、ラッシュ時を過ぎた地下鉄のホームでの飛び込み自殺による非常制御スイッチ起動での停電した3分後から始まります。舞台は駅のホーム下の退避場所。駅員2人の会話劇として構成されており、それぞれの駅員の関係性や過去が次々に明らかになっていきます。
エピソードを少し盛り込みすぎの感はありましたが、もともと駅員1が運転士をしていたこと、駅員2の弟が飛び込み自殺を図ったことなど、とりとめのない会話の中からそれぞれの現在・過去が浮かび上がります。そして、タイトルとなる「鼠」のエピソードも。
演出を手掛けた笠井友仁は「空間」「身体」「音」にこだわった独特の世界観をもつと評され、小さなホワイトキューブをうまくホーム下の空間へとしあげており、また文字や影が効果的に使われていました。
公演終了後は、隣のカフェでささやかな交流の場がセッティングされており、観劇後にお客さん同士、またはお客さんと演出家、脚本家、出演者などとの意見交流ができる仕組みになっていました。
「あの場面がおもしろかった」「前回と今回では何がちがったのか?」「あの場面での演出はわざとなのか?」など、様々な会話や意見が酌み交わされていました。
アーツサポート関西 事務局 柳本牧紀
モンゴルズシアターカンパニー主宰・増田雄さんに聞く
Q1:今回の「助成対象事業」に向けての取り組みはいかがでしたか?
大阪市北区の文化発信として、たくさんの地域からの来場者があったことがとても嬉しく思います。今回の上演場所であるイロリムラが、多くの方々に知ってもらったこと、そして面白がって頂いたことが良かったです。
Q2:お客様の反応はいかがでしたか?
アンケート回収率70%、内【大変良かった 115名】【良かった 83名】【ふつう 4名】【つまらなかった 1名】【その他(感想文のみ)20名】と非常に評価が高く感じられました。
Q3:自己評価、メディアへの掲載なども含め、どのような成果が得られましたか?
終演後も、ワールドカフェなどお客様一人一人の意見を聞く場を設けることで作品の理解、改善点、交流を通しての共有がなされたことが最大の成果です。普段は金銭の関係で三日ほどの公演しか出来なかったことに比べ、今回は二週間もの上演が実現し、いつもは来ることの出来ない大阪、東京、広島、海外からのお客様が多く来場された。また、日を増すごとに作品の噂を聞きつけ来場される方が増え、自団体の宣伝にも繋がりました。作品のクオリティーも長期間で向上し、今後の創作においてのすステップアップにつながったと思います。
Q4:ASKの助成金により可能になったことは?
費用を前入金頂くことで素早い対応が可能となりました。寄付という形態がアーティストにとって良い意味でのプレッシャー、かつ自信に繋がり、創作する上での精神的な支えになったと思います。
Q5:今後の展望
私たちのユニットは、演劇が社会とどう関わり、どう影響を及ぼすかを具体的に考えながら活動を行って参りました。演劇の上演だけでなく、人と人が結びつき、違う価値観を共有し合える場の提供をすることで、観客自らが参加し、創作出来るイベント作りを今後も企画していきたいと思います。
次回は演劇という媒体が持つ客観性を活かした舞台作品を考えています。内容として、50分ほどの戯曲を1度の公演で2回上演します。最初は深刻な物語として、2回目の上演は雰囲気を一変しコミカルな物語として描きます。同じセリフでありながら、演出を変えるだけでその状況は全く違うものになることを訴えると同時に、演出や戯曲といった一般的には馴染みのない役職へ目を向けてもらうことで、演劇の魅力を伝えたいと思います。