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活動報告

【視察報告】7つの船2016実行委員会「7つの船」(美術)
2017年2月22日

H28年度 助成対象事業・視察報告

7つの船2016実行委員会「7つの船」

概要:大阪の夜の水辺を船で航行しながら、船の内外に仕掛けられたさまざまなアート的な趣向を乗船者に体験させる取り組み。大阪を拠点に活動する現代美術アーティスト、梅田哲也が中心となって企画したプロジェクトである。「7つの船」とは、2016年12月の7日間に、大阪市街中心部の本町橋と住吉区の名村造船所跡地を往復する船を7往復させることに由来する。1日に本船(定員25名)と裏船(定員8名)の2艇が出航し、7日間にわたってそれぞれ上便・下便として1往復するため、出航数は全部で28便となる。定員はのべ450人以上におよび、定員制のアートイベントとしては小さくない規模である。この企画は、昨年大阪府・市が主催した芸術文化魅力育成プロジェクト「中之島のっと(knot)」の一環として実施された「5つの船」の続編的なものであるが、定員が前回の140人から大幅に増員されており、主催者による活動効果を高める取り組みが見て取れる。

 

視察報告:視察者の乗った便は本町橋出航の下り便であった。大阪市中心部の本町橋船着場から、東横堀川、道頓堀川を通過し、京セラドームを右に見ながら、大正区の工場地帯を抜けて住吉区の名村造船所跡地を目指す約2時間の航路である。船には本船・裏船とも屋根がなく、立ち上がれば頭が船体から出る格好となり、12月の夜の川面を渡る寒気が顔の皮膚に冷たくあたる。



出発に際して主催者の挨拶や航路の説明等は一切ない。参加者全員が乗船したのでいつのまにか岸を離れていた、という感じで、観客は、この時点でこれから何が起こるのか全く想定できない状態に置かれる。進行役をつとめる女性が、マイクで自分の心象風景的な言葉をぽつりぽつりと語りだすのみで、しだいに船内に非日常的な空気が漂い始める。

夜の水路を船で航行するだけでもすでに非日常的な体験なのだが、そこで提示される日常と非日常との境界が消失したような数々の奇妙な事象によって、参加者の意識が虚構と現実の狭間に囚われたような状況となる。高速道路の高架下を進む船の中から、梅田自身が懐中電灯を使って見上げるように橋の巨大な構造を浮かび上がらせたり、突然一艘の小型ボートが背後の暗闇から疾走してきて機関銃のようなものを乱射しながら追い抜かして行ったり、途中立寄った桟橋でトレンチコートを着た無言のサラリーマン風の男が乗り込んできたりといった、度合の強弱はあるものの、大阪の街の日常の中に無作為を装って配置された非日常性によって、ストーリーらしきものがその場に現れ、参加者の意識は水面の両側に連なる闇に閉ざされた夜の街・大阪の内部へと誘われていく。



芸術とは、作品を介して鑑賞者の意識を拡張させ新たな価値に触れさせるものであるならば、梅田は固定的な作品のかわりに、ナイトクルーズとそこに派生する様々な半日常的な事象からなる「状況」を創り出すことによって、鑑賞者たちの意識を解放し、見事なアート的な体験をもたらした。それには、あえて鑑賞者へのインストラクションを排除することで、未知の状況に向けられる彼らの自発的意識が高められていたことも寄与していたはずだ。これらを意図して作為と無作為の微妙な加減を差配しながらプロジェクトを構成した梅田の手腕は高く評価されよう。

「7つの船」では、梅田のほか、イギリスを拠点に映像作品を手掛けるさわひらきとベルリンを拠点に活動する現代美術アーティストの雨宮庸介の二人が加わり、この企画の構造に厚みを加えた。さわは、途中、移動する船の中からプロジェクターで川岸の建物に映像を照射したほか(視察者の回では残念ながら機器の不具合で実施されなかった)、終点の名村造船所跡地の船着場で対岸の倉庫の壁面に巨大な映像プロジェクションを行った。雨宮は期間中裏船に乗り込み、本船のクルーズに影響をおよぼずパフォーマンスを演出・実施していったほか、本プロジェクトと連動したSNSサイトにおいて、プロジェクトにまつわる歴史や事物などに触発されて書かれた詩情豊かなテキストを連載した。

しかし最も特筆すべきは、夜の水面の美しさであったかも知れない。漆黒の深みをたたえて静かに船を包み込む水面は、風がなければ鏡面のようになり、時折、岸辺の光を反射させながら、乗船した者の視覚に対して、これまで見たことのないような美しい世界の様相を提示して見せた。世界に対して最小限の作用を施し、その微妙な作為に気づかせることでアート的な意識の拡張をもたらす梅田のアプローチが今回対象としたのは、まさに大阪の街そのものであった。大阪という「場」・「空間」・「時間」を作品化した今回の取り組みは、アートの意味、その拡張性、また実際的な企画運営の観点から見て、極めて高い水準にある取り組みであったと考える。特にアートのひとつの表現方法として、新しい可能性を示すものであった。

ただ、無作為や偶然にゆだねられた部分が重要な役目を果たすとはいえ、一部、事象間のつなぎやそれが起こるタイミングにおいて改善の余地があったように見えた。プロジェクトの構成が極めて複雑に入り組み、舞台が水路を航行する船であるなど様々な制約を抱えたものであっただけに、さらに入念な準備が行われていたら作品の感動がより増していたのではないだろうか。

アーツサポート関西 事務局 大島賛都


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(Photo by : Ysuke Nishimitsu)

 


助成対象者へのインタビュー


Q1:今回の「助成対象事業」に向けての取り組みはいかがでしたか?

昨年は大阪府・大阪市の実行委員会による「中之島のっと」という事業の中で展開できたが、今年度は自主的に実行委員会を立ち上げての事業であったので、全くの縛りがない代わりにどこまでも自分たちで立ち上げていかなければならないという困難さがあった。

しかしながら、多方面の方々にご協力をいただくことができ、意図したことが可能となって行ったことは大変ありがたいことです。

Q2:お客様の反応はいかがでしたか?

アンケートにもあるように、98%の人々が良かったと回答、91%の人々が同じようなイベントを再度行って欲しいと答えていただけている。

多くの参加者は、自分たちの知らない大阪の姿―大阪の裏側を非日常である船から望むという体験に非常感銘を受けたようである。普通の観光船でのクルーズではなく、そこにさらに非日常の「作品」を持ち込むことにより、人々の心は揺さぶられ、よりその風景を感じることができたのではないだろうかと思われる。

Q3:どのような成果が得られましたか?(自己評価、メディアへの掲載など)

昨年に引き続き、船に乗り非日常の現象(作品、パフォーマンス)に遭遇しながら大阪の川を巡ることにより、今までとは違った、自分たちの知らないまちの姿を目の当たりにすることになり新たな体験をしてもらうことができた。また、昨年の経験上から船のコースやそこから見える風景などから計算しながら「しかけ」ることができたので、作品としての完成度があがっていった。

新聞各社へのプレスリリースに対してはレスポンスがなかったが、ウェブメディアで取り上げてもらうことができ、集客にもつながった。

Q4:ASKの助成金により可能になったことは?

昨年度からの構想の中で、元々想定していたような海外からのアーティストを招聘するなど、作品を作りに対する完成度を高めることができた。

Q5:今後の展望は?

一連の事象を含めた「ナイトクルーズ作品」としてのパッケージを作成することができたので、再演という形での実施がしやすくなった。

また、これをベースにして原点回帰するような作品づくりー川を巡るための「船」や巡る「場所」といった演劇でいう舞台装置のようなものを作っていくような、新たな作品展開ができないかと考えている。

Q6:ASK助成(制度)に望むこと

継続的な助成。単年度助成ではなく複数年かけて成し遂げられるようなものに対する助成も望みます。

Q7:サポーター(寄附者)に望むことは?

様々な芸術行為を知ってほしい。評価が定まらないものに対して助成(寄附)をする意味を知ってもらい、大阪の文化の更なる向上を共に目指していただきたいと思います。

【視察報告】極東退屈道場「百式サクセション」(舞台芸術)
2017年1月26日

H28年度 助成対象事業・視察報告

極東退屈道場「百式サクセション」

概要:独特なモノローグとシーンの断片をコラージュし、ダンス・映像を駆使することで、「都市」の姿を斬新に切り取る「極東退屈道場」。関西劇作家の登竜門、OMS戯曲賞で第18回大賞・第20回特別賞を連続受賞した実力派である林慎一郎が主宰する演劇ユニットの公演。「PORTAL」が第61回 岸田國士戯曲賞の最終候補作品に選ばれています。

スタッフの視察報告:会場であるアイホール(伊丹市立演劇ホール)に入ってすぐ、その舞台美術に圧倒されました。四角いホールの角を利用して部屋の角と真ん中が舞台となり、空間を囲む三方に客席が設けられています。床には新聞紙が敷き詰められ、天井には雲が浮かんでいます。遠くにそびえるビル、電灯、自動販売機など様々なものが段ボールで作られていました。会場に一歩踏み入れただけで、その作品世界にもぐりこんだ感覚になりました。

最初に登場する老婆。ビールケースでできたステージに進みながらその腰はすっくと伸び、過去にタイムスリップしたのか、はたまた老婆の娘となったのか、歳が若返っていきます。老婆から「ナオミ」となった主人公が登場してステージで異邦人を熱唱しはじめるとその周りでは今後の登場人物となる人々が踊りだします。

この主人公の登場の仕方が見事だったのと、先日の舞台練習で見た異邦人のダンスシーンが冒頭に使われているということで、初めからこの作品への期待度があがりました。

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登場する役者は6人。ナオミと彼女を取り巻く様々な人々へと役が変化していきます。タゴサクと呼ばれる男、ご隠居と呼ばれる男、ナオミの娘たち・・・登場人物それぞれがナオミと関わりを持ち、都市・老いと関わっていくという要素が随所にちりばめられており、それが天王寺公園の撤去される運命にある百円カラオケの場に集約されていく、という大きな流れがあるようですが、人間関係や人物のキャラクターなどの描写が希薄で少々分かりずらいところもありました。代表の作・演出を手掛けた林は、作品を通して「都市が老いた人々をみつめる眼差しとは」ということに迫りたかったと述べています。

極東退屈道場の特徴として劇中で行われる「ダンス」といものがあり、今回も作品の要所要所で役者が踊りだすシーンがありました。インド映画のように物語が高揚した場面でみんなが踊りだすというわけでもなく、ミュージカルのように歌やダンスが多用されている訳でもありません。当日配布のパンフレットで振付を担当した原和代氏は「常に監視され管理された都市に描かれる、均一化されてしまった身体とそれを見る観客の身体に、個々の持つ呼吸を回復させるためのマッサージのようなたわみの時間、そうなればいいなと思います」と書いています。まさに「たわみの時間」がそこに生まれているように思いました。

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今回の作品を見て、林の伝えたい思いや演出したいことはふんだんに盛りこまれているのですが、それが少々まとまりを欠いているため、観客に伝わりきっていない印象を受けました。都市やそこに暮らす人々、また今回は老人問題など問題となる視点が広がりすぎていて、それにプラスして登場人物それぞれの視点も多いため観客は少し飽和状態になっていたのではないでしょうか。

若手作家、演出家として評価を受けているだけに今後の活動を期待したいと思います。

アーツサポート関西 事務局 柳本牧紀


助成対象者へのインタビュー


Q1:今回の「助成対象事業」に向けての取り組みはいかがでしたか?

通常の公演より公演予算が増えたことにより、取材などより準備にリソースを割くことができ、作品に深みができた。また、劇場全体を架空の公園に見立てる美術や、初の函館公演の実現、現地演劇人との交流などが大きな成果であった。

Q2:お客様の反応

兵庫公演では、大阪の青空カラオケというモチーフからに、観客は失われた風景を想像し、ドキュメンタリー性の中から立ち上がる架空の物語を体験したようである。北海道公演は、そのモチーフすらも架空の物語として受容し、(つまり「大阪」そのものが架空と思える程の実際の距離)、同じ作品にも関わらず、観客の反応によって別の場所に変容したことが大変興味深かった。

Q3:どのような成果が得られたか?(自己評価、メディアへの掲載など)

助成を受けることにより函館公演を実現することができ大阪の小劇場の魅力を広めることができた。

函館は市内全域で過疎化が進み、あまり演劇は盛んではない。しかし助成により水準の高い作品の遠隔地への移送が実現したことで、地元演劇関係者との交流を産み、創作上の大きな刺激となったと評価を受けた。また大阪の劇団の来函に関心を持ち、普段劇場ヘ足を運ばない観客層も多く見られ、特に高齢者の関心が高く、現代演劇の普及に寄与できた。北海道・函館は、林慎一郎の故郷でもあり、作家として、内包された自身のプライマリーを探る作品となり、この作品を創ること、上演することにより、作家としても、成長することができた。

Q4:ASKの助成金により可能になったことは?

北海道公演の実現に大きく役立てることができた。または舞台美術、映像など「青空カラオケ」が繰り広げられる架空の公園のリアリティを充実させる事ができた。

Q5:今後の展望

今回の作品作りを通じて、また新たな地域との関係を生み出すことができた。関西で演劇を作るものとして、演劇のもつローカル性は非常に重要だと思っている。関西という地域で生まれたものを、別の地域に運びその地で暮らす人々の目の前で演じることの体験は今後も創出していきたい。

Q6:ASK助成(制度)に望むこと

サポーターと、芸術団体の連携方法を課題とされていたようだが、現実的に寄付者とコミュニケーションをとることは、たくさん課題があるように思えた。どのような方法があるか、我々芸術団体も含めて模索する必要があると思う。

 

【視察報告】空間現代「『外』オープニングプログラム」(音楽)
2017年1月24日

H28年度 助成対象事業・視察報告

空間現代 「外」オープニングプログラム

概要:結成以来、東京を中心に活動を行ってきたバンド「空間現代」が京都に拠点を移し、2016年9月に自らが企画運営する音楽スタジオ兼ライブハウスをオープンしました。今回はそのオープニングプログラムへの助成となります。

2006年現行メンバー3人によって結成。最初こそ、パンクバンドとして活動していたそうですが、徐々にジャンルレスの、形容しがたい音楽の状態を追及するようになり、現在、その先鋭的な音楽性が高い評価を得ています。また、音楽という枠を超えて、演劇、ダンス、現代美術などのアーティストとも数多くコラボレーションし、芸術という様々な場で横断的な活動をしている点も注目されています。

 

スタッフの視察報告:彼らがオープンさせた「外」は京都市バス錦林車庫前駅のすぐ目の前にあります。1階がスタジオ兼ライブスペースで2階は事務所となっています。

この場所で行われる公演は全て、「外」並びに空間現代が主催・ディレクションに関わっていき、主催公演の他、アーティストやイベンターとの協働プログラムも継続的に開催していくとのこと。今回のオープニングプログラムは16日間に及び、バンド外部の者がセレクターとして関わり、出演者を決めるプログラムも盛り込まれています。

9月25日の公演では、メディアアートの国際的な祭典「アルス・エレクトロニカ2013」で準グランプリを受賞したSjQを含む2バンドの出演公演となりました。

まずは空間現代の演奏からスタート。

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普通のエイトビート等とは違う、変拍子にも思えるドラムから始まり、ギター、ドラムと音が重なっていく・・・永遠と続くと思われるその音楽は観客をトランス状態にさせ、徐々に彼らの音楽世界に引きずりこまれていきます。

演奏される曲は、ふと即興なのかと思いましたが、ちりばめられた「キメ」の部分が素晴らしく、すべてが計算され作られたものであり、練習の賜物であると気づかされます。彼らの音楽ジャンルは、変拍子や転調を多用した複雑な構成である「プログレ」(「プログレッシブ・ロック」)のジャンルに分類されることもあるそうですが、この一見複雑な楽曲は過去に作った曲を一度解体して違う曲の一部をつなぎ合わせるなどして再編成させたものだそうです(9/17アフタートークにて)。

DSC_1383 佐々木敦氏、三浦基氏によるアフタートークの様子

今回のオープニングプログラムでは、彼らと同年代、それ以下の若手アーティストも多く参加していますが、山本精一やPhewといった80年代ごろからのパンク、ニューウェーブ、ノイズなどをけん引してきた人々がラインナップに上がってきています。空間現代の音楽が、ただ新しいこと斬新であるということにだけ目を向けているミュージシャンではなく、地に足ついていて、どこか、少し懐かしい感じを受けたのは、そういった時代ごとに先鋭的だといわれてきた音(しかしながら、現代でも決して古いものという訳ではない)へのオマージュのようなものを持っていると感じられたからかもしれません。

 

ミュージシャン自らが拠点を作り、制作するだけでなく、様々なジャンル・世代の人々やその周辺にあるものとの接点をもっていこうという動きは、閉鎖が続くライブハウスの文化とはまた違う形において、今後、関西の音楽シーンに新たな展開をもたらすもののようにも思いました。

IMG_4022 「YPY+YAMAT」LEDを使った装置の設営時の様子
IMG_5695 大阪を拠点とするドラムデュオ「ダダリズム」


アーツサポート関西 事務局 柳本牧紀



助成対象者へのインタビュー


Q1:今回の「助成対象事業」に向けての取り組みはいかがでしたか?

バンドのメンバー全員が移住しライブハウスを作って運営するということが前例のない取り組みだったので、空間現代にとって非常に大きな挑戦でした。今回の事業はそのオープニングプログラムということで、工事と並行しての準備は大変でしたが、連日のイベントに様々な音楽ファンが集い、「外」の運営の道筋をつくることができました。

Q2:お客様の反応

先鋭的なプログラムの内容に、アーティストが運営するライブハウスならではの独創性を見出していただけたように感じます。また、バンドがライブハウスを運営するという取り組み自体にも応援の声を多数いただきました。

Q3:どのような成果が得られたか?(自己評価、メディアへの掲載など)

ライブハウスという拠点を持ち運営するという空間現代の取り組みに対して、多くの方に興味を持っていただくことができたと思います。日本経済新聞では文化面の特集記事で、音楽シーンの活性化につながる活動と評価していただきました。

Q4:ASKの助成金により可能になったことは?

知名度に関わらず前衛的・革新的な表現を行うアーティストを数多く招聘し、観客に新しい音楽との出会いの場を提供することができたと思っています。

特に東京からアーティストを招聘する場合交通費などの経費がかさむため、貴団体の助成が無ければ招聘が難しいアーティストの出演が可能となりました。

Q5:今後の展望

今後は、音楽のみならず、さまざまな芸術分野のイベントを「外」で開催する予定です。また、国内外問わず先鋭的なアーティストを招聘し、京都における新たな文化の発信拠点となることを目指しています。

Q6:ASK助成(制度)に望むこと

パトロンプログラムのような、サポーターと助成を受けた団体をつなぐ取り組みを、今後もさらに継続発展していただきたいです。

Q7:サポーター(寄附者)に望むこと

寄附者の方々には、寄附によって行われる事業がどのように行われているか、実際に会場に足を運んでいただくことを望みます。また、アーツサポート関西という仕組みをぜひ周りの方々に広めていっていただきたいです。

【視察報告】Re:ブリックス「カラカラ」(演劇)
2016年10月31日

H28年度 助成対象事業・視察報告

コンブリ団 Re:ブリックス「カラカラ」

概要:「まずは観客の『生活』に身近であること。現代演劇を創る我々は自分の身近にある、自分と関係の深い事を取り上げ、演劇作品を創造して、観客の心に届けて行きます」。コンブリ団のホームページには、自らの劇団をそう説明しています。今回の上演作品「カラカラ」は、劇団の代表であるはしぐちしんの身近な一人であった劇作家で演出家の深津篤史の作品。2014年に46歳の若さで急逝した深津作品を、彼と交流のあった劇団が再演する「深津篤史演劇祭」の第一弾ともなりました。

スタッフの視察報告:老舗小劇場「ウィングフィールド」の、客席はほぼ満員。何の前触れもなく、舞台上に布団が敷かれ、一人の女性がそこに寝そべり漫画を読んでいる。始まったのかと思いきや、時間は上演予定の少し前でした。しばらくすると、作業服を着た2人組が入ってきて、寝そべる女性ごと布団の位置を素早く移動。「カラカラ」が始まります。

この作品は、1995年1月に発生した阪神淡路大震災を機に作られたもので、同年5月に発表。災害後の避難所を舞台に描かれています。演出は岐阜県に本拠地を置くジャブジャブサーキットのはせひろいち氏。

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登場人物は、白い衣装の3人、避難所の小学校でゴロゴロ漫画を読む女性、その兄、友達。白い衣装の3人は、どうやら生きている人ではなさそう。3人は子どもとその宿題を見守る車いすの男(はしぐち)、若い女性。どのような関係でそこに集まったのかは定かではありませんが、始終動き回る車いすから聞こえる「カラカラ」が心地よく、そして効果的で、なんとなくその関係や現実と虚実の世界をつないでいるように思えました。

 避難所の不自由さ、車いすに乗るという不自由さ、あの世とこの世を分けるでも結びでもなく、完全に乾いてしまった音ではなく響く「カラカラ」の音がほんのり人の温かみを感じたりもしました。

 大道具などは特になく、舞台の天井につるされた格子状のバトンが揺れることで、余震を感じさせるなどの演出となっており、その場面の状況はよく把握できるものとなっていました。車いすの「カラカラ」の音も有効に使われていました。もう少しスタイリッシュなシンプルさがあると、深津氏の、おそらく余白の多い戯曲により思いを馳せることができたのではないかとは思いました。

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芝居後には戯曲のリーディングとアフタートークの場が設けられていました。リーディングは、目の前に繰り広げられていた芝居を観た後に体験するからか、深津作品だからなのか、非常に想像力を掻き立てられるものとなっていて、今回の「深津作品を楽しむ」という上で非常に有効であした。また、全く違う劇団の作家や演出家を交えて行うアフタートークは、それぞれの解釈の仕方の違いなどを知ることができ、より芝居を楽しむことができました。

アーツサポート関西 事務局 柳本牧紀



助成対象者へのインタビュー


Q1:今回の「助成対象事業」に向けての取り組みはいかがでしたか?

カンパニーとしては新シリーズを立ち上げ、今までと違うスタイルでの作品づくりになりましたが、素敵な演出家、共演者、スタッフに恵まれ、良い環境で演劇作品が創れました。

Q2:お客様の反応

観劇後、震災や災害のことを考えたというご意見、深津篤史という劇作家と出会えて良かったと言うご意見を多くいだだきました。

Q3:どのような成果が得られたか?(自己評価、メディアへの掲載など)

こちらが舞台作品として提示したものをお客様がそれぞの形で持ち帰っていただいたと感じております。その意味で良い舞台作品が制作できたと思っております。

Q4:ASKの助成金により可能になったことは?

助成金は演出料に充当いたしました。素晴らしい演出家を招いて作品が創れたため、公演の成功があったと実感しております。

Q5:今後の展望

新シリーズと従来の作品づくりの両立を目指していく予定です。

Q6:ASK助成(制度)に望むこと

公演前に助成金が振り込まれるので運転資金ができ、とても助かりました。今後もこの方式を続けていって欲しいと思います。

Q7:サポーター(寄附者)に望むこと

より多くの人が劇場に足を運んでいただけるよう、広報等にも協力していただければ、もっともっと演劇を観る人が増えると思っております。よろしくお願いします。

【視察報告】クールジャパン・アダルトロック(音楽)
2016年10月24日

H28年度 助成対象事業・視察報告

平井孝明「クールジャパン・アダルトロック」

概要:「クールジャパン・アダルトロック」は、月刊音楽フリーペーパー「JUNGLE LIFE」を手掛ける平井孝明氏が仕掛け人となって「音楽的にパイオニアの文化が根付いている関西で、関西のアダルトロック・バンドが世界に認知される機会を広げ、関西のポテンシャルを発揮するように」とはじまり、今回で5回目を迎えます。音楽を通じて、演奏者、観客が「人生の豊かさ」を享受できるようなイベントを目指しています。

スタッフの視察報告:大人たち(社会人)たちの熱いロックイベント「クールジャパン・アダルトロック」の会場は、心斎橋にあるFootRock&BEERSという、サッカー鑑賞BAR、ライブハウスほか様々なイベントを行っているスペース。スポーツ界、音楽界、文化人、メデイア・放送局関係、イベンター、学生企画団体、企業家様々な人たちが日々集まってきているようです。

普段は、サッカーのゲームが鑑賞できるBarであったり、結婚式などの二次会に使われたり、オフ会イベントに使用されたり、ライブハウスになったりと用途は様々です。

今回の「クールジャパン・アダルトロック」は、月刊音楽フリーペーパー「JUNGLE LIFE」を手掛ける平井孝明氏が仕掛け人となって「音楽的にパイオニアの文化が根付いている関西で、関西のアダルトロック・バンドが世界に認知される機会を広げ、関西のポテンシャルを発揮するように」とはじまり、今回で5回目を迎えます。ロックのライブとなるとオールスタンディングのイメージですが、「アダルトロック」だけに、50人程度の客席が設けられていました。演者はゲスト以外は40歳をゆうに超えている(失礼)。ロック、アコースティック、R&B、ソウル、ハードロックなど様々なジャンルの音楽を聞かせてくれました。


ロックイベントのMCならバンディ石田です

申請書に「音楽を通じて、演奏者、観客が「人生の豊かさ」を享受できるようなイベントを目指します。」とありましたが、演奏の安定感からの「音の豊かさ」を感じるだけでなく、中年の、社会の酸いも甘いも経験してきたと思われるそれぞれの演者が、ステージ上では輝きを放っており、まさに「人生の豊かさ」を体験することができるイベントでした。

 
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(左上)おやじとは言わせませんよ。このグルーブR-CALL/(左下)澄みきった歌声ウンPapaルンPapa/ (右上)捧腹絶倒!!バカテクのギターVep Halen/(右下)浪速のファンク・ブルースならこのバンドですBLACK LIST REVUE

社会人であり、アマチュアではあるがミュージシャンとして活動する人々を対象としたプロジェクトとして「クールジャパン・アダルトロック」を開催し続けているというのは、若者がメジャーデビューを目指すとことではなく、また内輪のノリで発表会を行うのでもないという、アマチュアバンドの音楽シーンに新たなムーブメントを作っていくようにも思われます。

今回のアーツサポート関西の助成対象プログラムとしては、イベントの開催とそのライブ映像などを撮影のうえアーカイブ化していくというものもあり、双方が機能して今後も同イベントが続いていくことが、関西のインディーズ音楽シーンのプラットホームとなり、次世代へつなげていくべく更なる活性化を図ることとなると期待されます。

アーツサポート関西 事務局 柳本牧紀


 

 

助成対象者へのインタビュー

Q1:今回の「助成対象事業」に向けての取り組みはいかがでしたか?

集客もあり、多彩なバンド、アーティストがコラボ出来た事が収穫です。

Q2:お客様の反応

次回開催の日程をほとんどのお客様に確認された事。出演バンドに定期開催をオファーされました。

Q3:どのような成果が得られたか?(自己評価、メディアへの掲載など)

次回へのステップアップと、冠イベントの定着、集客力がついて来たこと。

Q4:ASKの助成金により可能になったことは?

MC、撮影などへのギャラ支払い

Q5:今後の展望

定期開催の実施と、社会人のオリジナル音源の配信、販売。野外フェス、大型ライブ会場での開催、海外へのメディア発信による、社会人ミュージシャンのプロモート

Q6:ASK助成(制度)に望むこと

次のステップアップのために金額面での見直しとサポーター制度、システムの簡素化、明確化を希望します。

Q7:サポーター(寄附者)に望むこと

顔が見えるシステム、アプローチの経緯を見える化にして欲しいと望みます。

【視察報告】燈(美術)
2016年10月13日

H28年度 助成対象事業・視察報告

濱脇奏 個展「燈」

概要:現在、ドイツのデュッセルドルフ美術アカデミーで学ぶ、同アカデミー3回生の濱脇奏さんによる個展「燈」が、加古川市にある「あかりの鹿児資料館」で開催されました。アーツサポート関西はこの展覧会に30万円を助成しました。

濱脇さんは、高校まで神戸で過ごし、高校時代からドイツの美術大学受験を視野にいれて独自にドイツ語を学習し、高校卒業後に渡欧。そしてドイツの大学受験に挑み、見事、世界で最も重要な美術大学の一つと言われるデュッセルドルフ美術アカデミーに入学しました。この大学は、ヨゼフ・ボイスなど今日の現代美術の礎を築いた世界的に著名なアーティストを多数輩出している学校として有名で、教える教師陣も、世界の第一線で活躍するスーパースター級のアーティストがずらりと並ぶ豪華な顔ぶれです。美術の世界において海外の大学で学ぶ日本人学生は少なくはありませんが、その多くが、日本の美大を出てから大学院に転入するケースが多い中、日本の高校で語学の習得からとりかかり、学部から海外の大学で勉強する方はあまり多くはありません。それだけに濱脇さんの進路選択には、美術やご自分の将来にむけた強い信念が感じられます。

スタッフの視察報告:会場となったあかりの鹿児資料館は、民間企業が運営する私設の博物館で、会社の創業時にランプを取り扱ったことなどから、国内外のランプや照明器具に関する様々な資料などを多数収集・展示しています。今回の濱脇さんの展覧会は、以前、加古川の別のギャラリーで開催された濱脇さんの個展をみた学芸員が開催を持掛ける形で実現したもので、この博物館の特別展示室で開催されました。

特別展示室は、正方形の形をした50㎡ほどの広さの空間で、壁面は展示用のガラス陳列ケースで占められています。濱脇さんは、ここの壁面に絵画を掛けるわけでもなく、また、ケースに立体作品を置くのでもなく、壁面のガラス陳列ケースそのものを作品化することを考え、この場所特有の、いわゆるインスタレーションと呼ばれる空間的な作品を展示しました。

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ただ単に「燈」と名付けられた作品の構造はとてもシンプルで、腰高から天井近くまであるガラスケースの内部全体に、透明のアクリル板を設置し、その全面に黒いテープで斜方向に整然と並ぶ黒いストライプを表現しました。アクリル板の背後には、ブルーとオレンジの光を発する照明器具を配置し、その光によって陳列ケースの中で黒いストライプが空間の中に浮かび上がります。特に、ガラスケースが直角に交わる角の部分では、角を挟む左右の表面ガラスにストライプやガラスそのものが映り込み、非常に複雑な視覚的な効果が生まれます。

「展示室には、今では見かけないガラスの展示ケースがL時状に対面に配置されている。ガラスの性質上、光の差し込む方向で反射や湾曲や屈折や映り込みがおこる。それをうまく利用して、オレンジと青を対面に配置することで、青側には対面側のオレンジの光が映り込み、奥へ奥へと光が続いていき、奥行きがあるような錯覚をおこすことができる。」「床にも天井にもその光が反射するため、左右前後にあわせ天井と床の上下にまでわたる2~3倍もの広がりのある部屋が出来上がり、別世界を想像させる。」(主催者の報告書より)

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濱脇さんはこの展示のために、今年前半に日本に帰国した際、現場を訪れ、「あかり」の博物館であることの場所の意味や展示ケースの壁面で構成されている部屋の空間的特性、それに加えて、普段ドイツにいることによる時間的・作業的な制約、そして予算などを検討し、このプランを考案したということです。

視察者の印象として、まず実現可能性を前提とし、非常にシンプルな手法で極めて大きな視覚的効果を生み出している部分に、物事の多様な側面をトータルに検討・判断しながら、そこから高い表現性を導き出す、アーティストとしての思慮深さ、もしくは「懐の深さ」のようなものを感じました。そこに未熟な意識のブレはなく、ベテランの作家がその効果の余韻を自ら楽しむような円熟的な佇まいすら感じれ、この若い作家が潜在的に宿すスケールの一旦を垣間見た気がしました。

アーツサポート関西の今年度の助成の基準は、高い水準を有するアーティストを見出し、光を当てることとしていますが、濱脇さんはまさにその基準に見事に合致するアーティストとして、アーツサポート関西としても、今後大いに期待を寄せながらその活動を見守っていきたいと考えています。

アーツサポート関西 事務局 大島賛都


濱脇奏さんに聞く:


Q1:今回の「助成対象事業」に向けての取り組みはいかがでしたか?

一年前の夏の会場下見から、今年の夏の展覧会の開催まで計画的に準備を進められた。広報活動も時間的余裕をもって始められたと思う。また、コンセプトをかなり練ることができたため、質を高められた。

 

Q2:お客様の反応

あかりの鹿児資料館初となる現代美術/インスタレーションの展示で、戸惑う姿が多く見られたが、ポジティブに捉えてもらえた。
時間をかけて見てもらうことで、訪問者自身で感じ、考えるきっかけとなり、新たなことを発見して充実感にあふれている様子だった。

 

Q3:どのような成果が得られたか?(自己評価、メディアへの掲載など)

現代美術があまり盛んでない地域の住民に、このような形で提示できたのはとても有意義であった。
更に私にとっても新たな挑戦(光を用いた作品づくり)であり、課題を見つけるとともに、この制作方法に可能性を見出すことができた。
神戸新聞、加古川経済新聞、BANBANラジオで告知をしていただき、これを見て来場された方もいて、新たに多くの方に私のことを知ってもらえるきっかけとなった。

 

Q4:ASKの助成金により可能になったことは?

やはりまずは展覧会のことを知ってもらって足を運んでもらうことが第一歩で、そのための広報活動(DM・チラシの配布、Webページへの掲載など)を充実させることができた。
そして、実際の展示内容の質を向上させることができた。シンプルであるが故に、手を抜けないところがあり、細部まで美意識の高い材質のものを使用することができた。
また、パトロンプログラムに選定されたこともあり、ASK関係者様、サポーターの皆様にご来場いただくことができ、さらに縁を深められた。

 

Q5:今後の展望

今後はさらにこの活動を充実させていき、もっと地域住民に近い形で発信できていければと思う。そして、徐々に活動範囲を関西へと広げてゆきたい。

 

Q6:ASK助成(制度)に望むこと

一度助成を受けた方々の成事業活動、さらには後の活動を紹介するプラットフォームのようなものがあればよいと思う。そうすれば、ASK全体の認識度・価値の向上、助成事業の質の向上、助成を受けた人の今後の発展、さらには関西全体の芸術活動の豊富さにつながってゆくのではないか。

 

Q7:サポーター(寄附者)に望むこと

実際に助成を受けた事業になるべく足を運んでいただき、興味関心度を高めて、こういった活動をもっと広めていく活動にご尽力いただきたい。サポーター=実際に社会に影響力・浸透力をお持ちの方が一声あげ、一行動するだけで地域、全国単位で大きく動くのではないか。

「岩谷産業文楽支援寄金」記者会見を開催しました
2016年10月6日

9月29日中之島プラザ(大阪市北区)にて、「岩谷産業文楽支援寄金」創設とその支援先について記者会見を開催しました。

アーツサポート関西では、平成26年度より2年間にわたり、若い世代の方々に文楽に親しんでいただくことを目的として、文楽技芸員が作るNPO法人人形浄瑠璃文楽座が行う事業「そうだ文楽へ行こう!!ワンコインで文楽」に対し500万円を助成してまいりました。これは京阪神ビルディング株式会社が設けた「京阪神ビルディング文楽支援寄金」からの支援によるもので、学生を対象にワンコイン(500円の自己負担)で国立文楽劇場にて文楽鑑賞ができるようにするほか、観劇の前に文楽技芸員が見どころレクチャーなども行い、文楽をより身近に感じてもらおうとする取り組みです。2年間で約1,000人の学生が参加し大好評を博しました。この度、この取り組みが2年間で終わってしまうのは惜しいと、岩谷産業株式会社様から500万円の寄附のお申し出があり、さらに2年間に渡ってこの事業を継続していくこととなりました。

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記者会見には、新聞各社や主要テレビ局から約30名の記者が参加し、会見では、寄附者の岩谷産業株式会社の牧野明次会長兼CEOをはじめ、今年5月まで駐フランス大使でもいらっしゃった鈴木庸一政府代表特命全権大使(関西担当)、NPO法人文楽座から理事長で三味線の竹澤團七氏、理事で人形つかいの桐竹勘十郎氏が、それぞれの立場からこの事業の意義や展望について語りました。特に、今回から30歳以下であれば誰でも参加できるようになり、日本で学ぶ留学生などにも積極的に参加を呼びかけていくことが発表されました。

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また、会見には、この「ワンコイン文楽」を通じて文楽に魅せられ就職も文楽関係の仕事に就くことになった女子大生や、ベルギーから日本文化の研究のために留学している女子留学生も参加し、文楽の魅力などについてお話しいただきました。

プレスリリースはこちら

【視察報告】ハイライトシーン(美術)
2016年9月15日

H28年度 助成対象事業・視察報告

現代美術のグループ展「ハイライトシーン」

活動概要:「ハイライトシーン」は、京都国立近代美術館の研究補佐員で美術館外でもさまざまな展覧会を手掛ける若手キュレーター平田剛志氏の自主企画により、大洲大作、中島麦、竹中美幸の3名の作家が参加して5月4日~5月22日にかけて京都のGallery PARCで開催された現代美術のグループ展です。展覧会のテーマ「ハイライト」を、さまざまな形で想起させる写真、絵画、立体作品で構成されています。アーツサポート関西では、この展覧会に30万円を助成しました。

スタッフの視察報告:会場となったGallery PARCは、京都の三条通沿いの繁華街の中心にある民間のギャラリーで「グランマーブル」というブランドでデニッシュを販売する会社が運営しており、最近目立ってきた京都の企業によるアート活動の一つでもあります。

会場は、コンクリート打ちっぱなしの壁面に大きな窓ガラスがつけられた変則的な空間で、そこに白い仮設壁面を建てて展示が行われていました。

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会場風景 竹中美幸の作品(右手奥)、大洲大作と中島麦の作品(左壁面)

 

写真を手掛ける大洲大作の作品は、対象を抽象的にとらえ、その色彩や形態をシンプルな要素に還元させていくような写真作品で、写真でありながら作家の造形的な恣意性が強く表れたものとなっています。中島麦の作品は、キャンバス上に細かな絵具の滴を無数に垂らしていくドリッピングによる絵画で、多様な色彩が幾重にも複雑に重なりあい、その偶然がもたらす色同士の反撥や飛沫の形態の妙などが絵画的な様相を際立たせています。

竹中美幸は、暗室で感光させた35ミリフィルムを天井から多数つりさげ、背後の大きな窓から差し込み光が淡い色を帯びて透過するスクリーン状のインスタレーション作品を展示しました。

highlight2 大洲大作 夏の光I(左)、冬の光II(右)

 

本展の作品の間には視覚的に穏やかな連携性があり、その点は評価されるべきものだと思います。一方、展覧会の解説文などで「ハイライト」という言葉を、物事の重要な部分を示すもの、および照り返された強い光という「強度」としてとらえていながら、展示作品が見せる比較的「おとなしい」印象との間に、ギャップがあるようにも思いました。

アーツサポート関西 事務局 大島賛都


 

「ハイライトシーン」キュレーターの平田剛志さんに聞く

Q1:今回の「助成対象事業」に向けての取り組みはいかがでしたか?

私たちは「ハイライトシーン」に何を見ているのか。映像や作品の見せ場を指して用いられる「ハイライトシーン」と美術表現における技法「ハイライト」の意味するものは何なのか。「ハイライト」をめぐるさまざまな「光」の在りようを、写真、インスタレーション、絵画という異なる美術作品を通じて考察する展覧会を実現できました。加えて、殺伐とした「ハイライト(シーン)」なき現代にとって、「ハイライト」を自分自身でつくることができたのは得難い経験でした。

 

Q2:お客様の反応

17日間の会期で710名の来場を得ることができました。当初目標には及びませんでしたが、有名作家による展覧会ではない本展に700名以上の来場者数があったことは評価できる結果でした。

会期中に開催されていた「KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭2016」との連携はありませんでしたが、「光」や写真など共通点もあり、本展と合わせて鑑賞する来場者が多く見られました。

「ハイライト(光)」という日常的にも専門的にも普遍的なテーマを設定したことで、来場された方々から、さまざま批評、感想をいただくことができました。それにより、光とは記憶や経験であり、人それぞれの「ハイライトシーン」が隠れていると気づきました。

 

Q3:どのような成果が得られたか?(自己評価、メディアへの掲載など)

本展は、会場に合わせた新作が多く、事前に「ハイライトシーン」を編集、想定できない不安がありましたが、結果的には各作家の作品が相互に反射、反映(ハイライト)した光に満ちた空間となりました。5月の光の強さと相まって、鑑賞者を含んだ展示空間そのものが「ハイ-ライトシーン」でした。

会期末の5月21日には、京都新聞朝刊にアートライターの小吹隆文氏が本展レビューを寄稿して頂きました。

 

Q4:ASKの助成金により可能になったことは?

出品作家2名が関東在住だったため、展示に関わる搬入出、作品輸送、宿泊が可能となりました。個人では負担が大きく、経済的、体力的に万全の態勢で設営や搬出を行えました。余談ですが、キュレーターと各作家とのやりとりは頻繁にあったものの、出品作家全員が揃うのは設営当日となり、搬入・設営がまさに本展の一つの「ハイライト」でした。作家が自身で設営に立ち会い、現場で生まれたアイデアを形にできたことはすばらしい経験でした。

 

Q5:今後の展望

これまで「光」をテーマとした展覧会「光路」(2015年、大阪)と本展「High-Light Scene」の開催を通じて、さまざまな美術作品に見られる現象学的、光学的な「光」を検証してきました。

今後は、「光」から「色」へと視点を広げ、光の三原色(赤、緑、青)3部作の展覧会を構想・準備しています。光や色は誰もが知っていながら、その思考や概念に幅があります。展覧会を通じて、光の三原色をプライマリーに思考することで、芸術作品にとって三原色とは何なのか、世界や日常に「色」を見る(ある)こと、色彩の感受・知覚へと還元していきたいと考えています。

 

Q6:ASK助成(制度)に望むこと

末永く継続を望みます。

 

Q7:サポーター(寄附者)に望むこと

助成対象者に引き続き、ご注目ご支援を頂ければ幸いです。

 

 

【視察報告】モンゴルズシアターカンパニー(演劇)
2016年9月8日

活動概要:モンゴルズシアターカンパニーは、特定の団員を持たず、公演ごとにふさわしいメンバーを配置するという方法で、様々な場所で公演を行うユニットです。「鼠-2016-」は2015年日本劇作家協会主催の短編演劇祭「劇王天下統一大会2015」で唯一関西代表に選ばれて上演された作品「鼠」を、若手演出家の雄―笠井友仁を迎えて長編作品として再編成されたものです。

スタッフの視察報告:会場となる大阪市中崎町のイロリムラプチホールは、入ってまずその小ささに驚かされます。舞台には大道具はなく、小さなホワイトキューブに約20名程度の客席がひな壇に設けられていました。大きな劇場では表現できなかった地下鉄のホーム下の雰囲気を演出するために、この劇場が選ばれたようです。前回の公演で400名もの来場者があったこともあり、公演は2週間に及び全18回上演されました。

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ストーリーは、ある春の日の午後、ラッシュ時を過ぎた地下鉄のホームでの飛び込み自殺による非常制御スイッチ起動での停電した3分後から始まります。舞台は駅のホーム下の退避場所。駅員2人の会話劇として構成されており、それぞれの駅員の関係性や過去が次々に明らかになっていきます。

エピソードを少し盛り込みすぎの感はありましたが、もともと駅員1が運転士をしていたこと、駅員2の弟が飛び込み自殺を図ったことなど、とりとめのない会話の中からそれぞれの現在・過去が浮かび上がります。そして、タイトルとなる「鼠」のエピソードも。

演出を手掛けた笠井友仁は「空間」「身体」「音」にこだわった独特の世界観をもつと評され、小さなホワイトキューブをうまくホーム下の空間へとしあげており、また文字や影が効果的に使われていました。

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公演終了後は、隣のカフェでささやかな交流の場がセッティングされており、観劇後にお客さん同士、またはお客さんと演出家、脚本家、出演者などとの意見交流ができる仕組みになっていました。

「あの場面がおもしろかった」「前回と今回では何がちがったのか?」「あの場面での演出はわざとなのか?」など、様々な会話や意見が酌み交わされていました。

アーツサポート関西 事務局 柳本牧紀


 

モンゴルズシアターカンパニー主宰・増田雄さんに聞く

Q1:今回の「助成対象事業」に向けての取り組みはいかがでしたか?

大阪市北区の文化発信として、たくさんの地域からの来場者があったことがとても嬉しく思います。今回の上演場所であるイロリムラが、多くの方々に知ってもらったこと、そして面白がって頂いたことが良かったです。

 

Q2:お客様の反応はいかがでしたか?

アンケート回収率70%、内【大変良かった 115名】【良かった 83名】【ふつう 4名】【つまらなかった 1名】【その他(感想文のみ)20名】と非常に評価が高く感じられました。

 

Q3:自己評価、メディアへの掲載なども含め、どのような成果が得られましたか?

終演後も、ワールドカフェなどお客様一人一人の意見を聞く場を設けることで作品の理解、改善点、交流を通しての共有がなされたことが最大の成果です。普段は金銭の関係で三日ほどの公演しか出来なかったことに比べ、今回は二週間もの上演が実現し、いつもは来ることの出来ない大阪、東京、広島、海外からのお客様が多く来場された。また、日を増すごとに作品の噂を聞きつけ来場される方が増え、自団体の宣伝にも繋がりました。作品のクオリティーも長期間で向上し、今後の創作においてのすステップアップにつながったと思います。

 

Q4:ASKの助成金により可能になったことは?

費用を前入金頂くことで素早い対応が可能となりました。寄付という形態がアーティストにとって良い意味でのプレッシャー、かつ自信に繋がり、創作する上での精神的な支えになったと思います。

 

Q5:今後の展望

私たちのユニットは、演劇が社会とどう関わり、どう影響を及ぼすかを具体的に考えながら活動を行って参りました。演劇の上演だけでなく、人と人が結びつき、違う価値観を共有し合える場の提供をすることで、観客自らが参加し、創作出来るイベント作りを今後も企画していきたいと思います。

次回は演劇という媒体が持つ客観性を活かした舞台作品を考えています。内容として、50分ほどの戯曲を1度の公演で2回上演します。最初は深刻な物語として、2回目の上演は雰囲気を一変しコミカルな物語として描きます。同じセリフでありながら、演出を変えるだけでその状況は全く違うものになることを訴えると同時に、演出や戯曲といった一般的には馴染みのない役職へ目を向けてもらうことで、演劇の魅力を伝えたいと思います。

ASKサポーター感謝のつどい
2016年4月20日

2016年3月23日、大阪能楽会館および梅田クリスタルホールにて、「ASKサポーター感謝のつどい」が行われました。

当日は、サポーターをはじめ関西で活動する芸術・文化関係者など約350人が集まり、大阪能楽会館の能舞台で行われた、アーツサポート関西の支援を受けた(または、これから受ける)方々による、クラシック演奏や文楽のパフォーマンスを鑑賞しました。その後、隣接する梅田クリスタルホールに会場を移して交流パーティを行いました。

交流パーティでは、芸術・文化関係者による11のブースが出展され、多くの参加者がそれぞれのブースを回り、出展者たちの声に熱心に耳を傾けていました。パーティでは、ご協賛企業からいただいた豪華賞品があたるチャリティ福引抽選会が行われ、そのチケットの売上約20万円のうちの30%にあたる額が、参加者の投票で最も多くの票を集めた関西フィルハーモニー管弦楽団に贈られることとなり、目録の授与の際には会場から大きな拍手が沸き起こりました。

アーツサポート関西の鳥井運営委員長は「よってたかって支援をする、を合言葉として、市民が広く文化を支援していくことが大切である」と述べ、関西経済同友会の蔭山代表幹事は「芸術・文化への理解があることが関西の企業の特徴であり、勇気をもって文化を支援していくべき。そのため寄付型自販機の推進に、同友会として取り組んでいく」と話していました。

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関西フィルハーモニー管弦楽団 若手演奏家支援/特定型助成(ザ・シンフォニーホール、大阪市中央公会堂など)
2015年10月31日

活動概要: 匿名寄付者が設置した寄金より、関西フィルハーモニー管弦楽団に300万円を助成。関西出身の若手ヴァイリニストが出演する2つの演奏会への支援、および児童養護施設の周年記念式典における同施設ブラスバンド部との共演活動を支援した。

内尾文香
内尾文香

スタッフの視察報告:  関西出身の2人の若手女性ヴァイオリニストが出演する、2つの関西フィルのコンサートを支援しました。1つ目は、第263回定期演奏会。ヴァイオリニストの清永あやさんがメンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲を演奏しました。清永さんは現在、東京芸大の大学院に籍を置く“学生”ですが、すでに国内外のオーケストラとの共演も多数で、艶やかでメリハリのある演奏で会場を魅了しました。2つ目は、大阪市中央公会堂での特別演奏会。こちらには、さらに若手の現役女子高生・内尾文香さんが登場。チャイコフスキー・ヴァイオリン協奏曲を演奏しました。内尾さんは難曲として知られるこの曲を、圧倒的なエネルギーで熱演。演奏後には指揮者をはじめ楽団員がみな足を踏み鳴らして喝采を送りました。二人とも関西から世界に羽ばたく演奏家として大きく注目を集める存在です。また今回の寄付者(匿名)が長年支援を続ける児童養護施設が100周年を迎えるにあたり、その記念式典で関フィルのブラスアンサンブルと同養護施設のブラスバンド部との共演が実現しました。夏から合同練習を行い、本番の式典では、心のこもった素晴らしい音色を響かせていました。(視察日 3/14、3/20、10/31)

楽団事務局長の朝倉祥子さんに聞く:
Q 2人の若い演奏家との共演はいかがでしたか?
A ソリストお二人の演奏技術の確かさと豊かな音楽性が実感できる演奏会でした。オーケストラの奏者は心から共演を楽しみ、その温かい空気が会場全体を包みました。ステージ上での姿も堂々としていて世界での活躍を期待します。
Q どちらの演奏会も満席でした。
A 人気の高いメンデルスゾーンとチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲がそれぞれの演奏会プログラムに入っていて、しかも若い新鮮で魅力的なソリストということも満席の要因の1つと言えます。また大阪市中央公会堂の演奏会は歴史的建造物である点で人気があります。

ANTIBODIES Collective ーDUGONG(元・立誠小学校)
2015年10月24日

活動概要: 音楽、映像、舞台美術等をユニークな手法で取り込んだ先鋭的なダンス公演。古い小学校内部全体を使い、パフォーマーが観客と入り混じりながら上演。旧名称はBABY-Q。

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Antibodies Collective公演風景          写真:井上嘉和

スタッフの視察報告:古い小学校(旧・立誠小学校)が会場で、ステージを設けず、講堂のような広い部屋、教室、廊下などの小学校の校舎全体が舞台です。観客は100人弱、演者が、観客の間を縫って動きまわります。特にストーリーはなく、ロングドレスの女性が背筋を伸ばして遠くを見ながら颯爽と歩き、軍服姿の男はグースウォーク、おかめの面を付けた女性は腰をかがめて踊るように動き回ります。ミニドレスの女性は、2人がペアで歩き、時々取っ組み合いのけんかをしながら移動していきます。10数人の演者は、それぞれが常に独自の動きをしながら移動しています。観客もいつの間にか演者に引きずられるように、さまざまな部屋へと誘われて行き、教室や廊下の間を回遊しています。こうした動きの中では、他の観客を演者かと思わされてしまう瞬間が、度々ありました。映像、照明、音、様々な物体、装置、演者の動きなどで構成された空間を、誰に指示されるわけでもなく、かと言って自分の意志だけで動いていたわけでもなく、ハーメルンの笛吹男に導かれた子供のように学校内のあちらこちらを連れまわされ、摩訶不思議な、時間と空間を体験させてもらいました。(視察日 10/24)

 

代表の東野祥子さんに聞く:
Q 今回の公演での取組みはいかがでしたか?
A 今回は横浜、京都の2カ所での公演であったため、移動費が予想以上にかかりましたが、どちらも大掛かりな空間を想定し、舞台美術や音響、照明などにこだわりました。また、今回チャレンジした観客に交じって上演する回遊型の公演は、演出部分で苦労しましたが、観客の方々からは新しい舞台空間の体験として、たくさんの好評をいただきました。
Q アーツサポート関西助成金70万円で可能になったことは?
A 東京から多くのダンサーやスタッフを招聘できました。また、舞台美術や音響、映像、照明、特殊美術などにより多くの予算を振り分けられましたし、作品の紹介ビデオ用にヴィジュアルイメージとして最先端のアニメーションを制作することもできました。

維新派 トワイライト(奈良県・曽爾村健民運動場)
2015年9月24日

活動概要: 大阪を拠点に国際的にも高い評価を得ている維新派の新作「トワイライト」の野外公演。奈良県曽爾村の雄大な自然を背景に、特設された野外劇場で上演された。

維新派 新作公演「トワイライト」
維新派 新作公演「トワイライト」

スタッフの視察報告:公演の舞台となったのは野外の広いグランドで、そこに500席余りの客席が階段状に設置されており、グランドの背後には兜岳、鎧岳の異形の山塊が薄暮の中に見通せます。少し肌寒い秋の夜風に自然が感じられます。公演の時間は約2時間で、名前が与えられた登場人物は、ワタルという少年とハルという少女、それにキーヤンと呼ばれる男の3人です。そのほかの40人ほどの登場人物たちは、集団として言葉を発し行動します。集団の発する言葉は、地名や体の部位の名前、道に関わる言葉、囃子言葉など短い言葉の連続で、しかもその言葉を独特のリズムで発し、全員で同じ動きをします。明確なストーリーがある訳ではありませんが、セリフや動き、全体の流れ、ワタル、ハル、キーヤンの発する言葉の中から、人それぞれに意味を持つ土地や地図、道や別れ道などがテーマとして浮かんできたように思います。観客には、遠いところまで時間をかけて足を運ばせて、室生火山群の異形の大自然の中に招き入れるという、それ自体がすでに見る人たちを引き付ける手段で、グランドの舞台では、独特の言葉とリズム、統制のとれた動きなどで観客を引き込むというこの公演の手法は見事だと思わされました。(視察日 9/24)

運営担当者の清水翼さんに聞く:  
Q 今回の曽爾村での公演に向けての取組みはいかがでしたか?
A この公演では、私たちも知らなかった曽爾村という場所への集客が課題でした。事前に曽爾村で役者の写真を撮影し、曽爾のイメージを具体的に打ち出すことで、維新派流の風景との出会いを演出し、お客さん自身に曽爾の風景との出会いを楽しんでもらえるような、想像の余白を提供しました。
Q ASKの助成金100万円で可能になったことは?
A 現地での告知用写真の撮影以外にも、運営体制やチケッティングなど、これまでとは異なった対応をしなければならない部分があり、助成金によってそうした経費が捻出できました。

タチョナ・プロジェクト KANSAIご近所 映画クラブ(大阪府立江之子島文化芸術創造センターほか)
2015年8月22日

活動概要: フランスの映像作家ミシェル・ゴンドリーのメソッドを使った映像ワークショップ。少人数のグループが企画から撮影までを数時間で行い、映像制作と同時にコミュニケーション・スキルを高める。

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スタッフの視察報告: タチョナ(touch on art)の映画制作ワークショップは、伊丹、淡路島、鳥取、大阪の4か所で開催され、その総括的な上映会が「えのこじま 仮設 映画館」で行われました。映画を作ると言っても、ワークショップに参加した初心者同士(初対面の場合も多い)が、話し合いながらあらすじを考え、台本を作り、役者として演技をし、カメラを回し、作品を作り上げるというものです。それを、原則、3時間で5分程度の作品に仕上げます。これはフランスの映像作家ミッシェル・ゴンドリーの制作メソッドによるもので、作り手は、小学生や中学生、高校生、一般の人など様々です。上映会では、ドキュメンタリータッチのもの、推理ドラマ的なもの、悩みの相談的なもの、スポーツ根性ものなど、20本以上が上映されました。素人が集まって短い時間で制作するには、コミュニケーションなど、様々な要素が絡み合う難しい作業になろうかと思いますが、最終的にはどのグループも1つの作品を完成させていて、達成感のある楽しい協同作業のように感じました。(視察日 8/22)

代表の小島剛さんに聞く:
Q 今回の取組の成果は?
A 短期集中型で、様々な事例を盛り込んだ実験プログラムになったと思います。また地域ごとにアートセンターやアートに関わる人々と協働できたことで、地域に根付かせる下地作りと共に、今まで以上の「ヨコの繋がり」ができました。
Q ASKの助成金55万円で可能になったことは?
A これまでは大阪や京都の学校教育プログラムと連携してきましたが、今回の助成で、それ以外の地域で実施する広域的プログラムとなりました。また、ファシリテーター養成講座も開催し、ファシリテーターのあり方を考えるためのプログラムを行うことができました。

あべの歌舞伎 晴の会(近鉄アート館)
2015年7月31日

活動概要: 松竹の上方歌舞伎塾1期生3人による歌舞伎公演。あべのハルカスの近鉄アート館で行われた。

新作歌舞伎『浮世咄一夜仇討』左から片岡千次郎、片岡松十郎、片岡千壽
新作歌舞伎『浮世咄一夜仇討』左から片岡千次郎、片岡松十郎、片岡千壽

スタッフの視察報告:  松竹の上方歌舞伎塾1期生の片岡松十郎、片岡千壽、片岡千次郎、3人の舞台です。いずれも門閥の出でなく、自らの意思で歌舞伎役者を目指した役者で、18年目の同期です。舞台の監修は、上方歌舞伎塾で主任講師を務めていた片岡秀太郎。公演は1部が舞踊で、2部は「浮世咄一夜仇討」の構成です。「浮世咄一夜仇討」は新作歌舞伎で、上方落語の「宿屋仇」をもとに作られています。落語が原作だけに、ドタバタ劇の要素もあって、楽しく見られる舞台でした。
舞台装置は小道具として使われた3面に使える衝立ひとつだけ。これを宿屋の女中役、片岡千壽が自ら運んでセットするという演出で、2つの部屋のシーン変わりも上手く芝居の中に取り込んでいました。300席の劇場で芸達者な3人が歌舞伎を演ずる今回の試みは、ファンを楽しませる要素が十分に詰まった企画でした。(視察日 7/31)

企画担当の松原利巳さんに聞く:
Q 今回の舞台に対する3人の取り組みはいかがでしたか?
A 松竹・上方歌舞伎塾の第1期生であるお三方は、三人三様の個性をいかした息のあった取り組みで、三人だけとは思えない新しい上方歌舞伎を見事に作り上げ、第一回のあべの歌舞伎を大成功させてくれました。
Q 今回の公演の成果は?
A 門閥ではない若手歌舞伎俳優が主役を務めた新作歌舞伎は「古典を踏まえ、三面客席の劇場を生かした新しい歌舞伎を創出した」と高い評価をいただき、これからの上方歌舞伎を担う若手歌舞伎俳優たちの新しい目標の一つになったのではないかと思います。

羽曳野少年少女合唱団(羽曳野市民会館)
2015年7月11日

活動概要: 活動43年目を迎える児童合唱団。練習場所が固定できずにいたが、ASKの助成により市民会館で毎回行うことが可能となった。

羽曳野市民会館での練習風景(羽曳野少年少女合唱団)
  羽曳野市民会館での練習風景(羽曳野少年少女合唱団)


スタッフの視察報告:練習場所は羽曳野市民会館3階にある広さ130平米ほどの大会議室。ピアノが常備されています。合唱団の団員は、幼稚園年中組の児童から高校生までの30人で、練習日は、レギュラーでは月3回ですが、大会や演奏会出演の前には、詰めて練習するので、実際には月4回ほどになるということです。練習中は合唱団OGの大学生も指導の補助に入っています。振りのついた曲などでは、この大学生が中心となって、高校生の団員らもアイデアを出し合いながら、楽しい振付を考えていました。団員たちは、年齢差がありながらも、年上の団員が幼稚園や小学校低学年の後輩たちをうまく指導し、皆が楽しそうに練習していました。また、初めての曲でも初見からちゃんと声を出し、みるみる上達していて、少年少女時代にきちんとした指導を受けながら、練習することの大切さを知らされました。(視察日 7/11)

指導者の中野彰さんに聞く:
Q 子どもたちを指導する中で大切にしていることは何でしょうか?
A 音楽的技術はもちろんですが、音楽を心の友として愛し、豊かな人生が送れる人間に育つことを願って、①楽しくのびのびと(心と体の解放)、②心のハーモニーを大切に(心と心を合せて美しいハーモニーを)、③感動する心(感動体験の共有)の3点を心がけています。

Q 子どもたちが最も嬉しいと感じる時はどんな時でしょうか?
A 何度も何度も練習して美しいハーモニーが生まれたとき、むつかしくて苦労した曲がうまく表現できたとき、思うように声が出たときなど、成功感や達成感を味わったときです。発表会で、自分たちが創り上げた音楽なのだ!自分たちで歌ったのだ!という喜びと、聴いてもらったという感動で心が満たされたとき、子どもたちの顔や目は輝いています。

下鴨車窓 #12 漂着(island)(香港・水泊劇場、マカオ・Macau Experimental Theatre、京都芸術センター、八尾プリズムホール他)
2015年6月15日

活動概要: 京都を拠点に活動する小劇場系の劇団・下鴨車窓のアジアツアー。現地でシンポジウムに参加するなどアジアの演劇人との対話も積極的に行った。

下鴨車窓「下鴨車窓#12 漂着(island)」
下鴨車窓「下鴨車窓#12 漂着(island)」

スタッフの視察報告:  この作品は、劇作家・演出家の田辺剛の新作で、香港とマカオの演劇祭に招待されて上演されたほか、国内でも京都、大阪、三重、東京で上演されました。芝居は2つのストーリーが交錯しながら進行します。1つは、映像作家が小さな島を舞台にした新作を作ろうとする流れ、もう1つは、この映像作家が書いている脚本らしきもの。そこには孤島に暮らす元建設会社の社長だったらしい男とその妻、それにこの夫婦の見張り役のような若い男、船で島に渡ってきた女が登場します。両方のストーリーに出てくる2組の妻と若い男は、同じ役者が演じており、舞台の上では、他方のストーリーの進行中に、もう1つのストーリーの登場人物が残っていたりして、舞台上での時間と空間が複雑に錯綜します。同じ役者が複数の人物を演じ、現実と虚構が交錯していくこの劇は、注意深く見ていないと筋が追えなくなりそうですが、限られた舞台上で、たった5人の役者によって、これだけの時間的、空想的な広がりを表現している点は、いわゆる「小劇場演劇」と呼ばれる日本的な演劇形態の素晴らしさが存分に発揮されていると感じました。(視察日 6/15)

劇作・演出の田辺剛さんに聞く:
Q 観客に最も伝えたい部分はどんなことですか?
A わたしたちの生が成果主義のような数値によってその価値が測られ、また目標になっている現代において、例えば演劇そのものの必要性など数値化できない価値をもう一度考え直す機会にこの作品がなればと思います。
Q 今回のアジアツアーでの収穫はどのようなものでしたか?
A 文化や趣向が違う海外の観客の前で上演することによって、自分の作品をより客観的に見つめる機会になりました。また香港や中国の関係者とのつながりができて再度の海外公演への足がかりができました。

Dance Fanfare Kyoto 03(元・立誠小学校)
2015年5月31日

活動概要: コンテンポラリー・ダンスのフェスティバル。今年で3回目。美術や演劇などの異分野とのコラボレーションに積極的に取り組み、新たな表現の創出を試みる。

 「呼び出さないでアフタースクール」  photo:Yuki Moriya
「呼び出さないでアフタースクール」  photo:Yuki Moriya

スタッフの視察報告: Dance Fanfare Kyotoは、ダンスを、演劇や美術、音楽など他の分野とコラボさせることで新しい表現を生み出そうという実験性の高い取り組みで、今年で3回目。5つの作品が上演されました。このうちのダンスと演劇とのコラボによるダンスコメディー「呼び出さないで! アフタースクール」は、男子高校生1人、女子高校生4人、女性の保健の先生、用務員さんの7人が登場。女子高校生4人は、新入生歓迎スポーツ大会の応援ダンス、手塚治虫、焼きそばパン、ルービックキューブに、それぞれ情熱を燃やしています。男子高校生は、みんなの動きや考え方に逐一言葉を挟み、解説し、励まし、批判し、観客の笑いを誘導します。ストーリーとしては、宇宙から女子高生を誘拐しに来たUFOをダンス・パワーで追い払うという荒唐無稽なものに、クラスに馴染めない転校生も仲間に入って、クラスみんながまとまり、新入生歓迎スポーツ大会の応援ダンスを団結して行う展開が絡む、というものですが、ストーリー性よりも、シーンごとの楽しさや可笑しさ、ダンスの素晴らしさといったものが素直に楽しめる、エンターテイメント性の高いダンスコメディーを堪能させてもらいました。(視察日 5/31)

実行委員長の北真理子さんに聞く:
Q 今回、3回目を開催されて前回とは違う手ごたえはありましたか?
A 今回、各運営メンバーが企画したプログラムを、良いバランスで実施できたかなと思います。それによって参加アーティスト、そして観客が、個々の興味を横断する形でダンスに出会う機会になったのでは、という手応えを強く感じました。
Q ダンスにはどのような可能性があると思いますか?
A 今回の企画で、ダンスが、美術、音楽、演劇、パフォーマンスといったジャンルを横断し、混在できる表現として提案できたと思います。今後はさらに、異なる国籍・活動地域・場において、新たなるダンスの可能性や広がりを考えていきたいと思います。