【視察報告】空間現代「『外』オープニングプログラム」(音楽)
2017年1月24日
H28年度 助成対象事業・視察報告
空間現代 「外」オープニングプログラム
結成以来、東京を中心に活動を行ってきたバンド「空間現代」が京都に拠点を移し、2016年9月に自らが企画運営する音楽スタジオ兼ライブハウスをオープンしました。今回はそのオープニングプログラムへの助成となります。
2006年現行メンバー3人によって結成。最初こそ、パンクバンドとして活動していたそうですが、徐々にジャンルレスの、形容しがたい音楽の状態を追及するようになり、現在、その先鋭的な音楽性が高い評価を得ています。また、音楽という枠を超えて、演劇、ダンス、現代美術などのアーティストとも数多くコラボレーションし、芸術という様々な場で横断的な活動をしている点も注目されています。
彼らがオープンさせた「外」は京都市バス錦林車庫前駅のすぐ目の前にあります。1階がスタジオ兼ライブスペースで2階は事務所となっています。
この場所で行われる公演は全て、「外」並びに空間現代が主催・ディレクションに関わっていき、主催公演の他、アーティストやイベンターとの協働プログラムも継続的に開催していくとのこと。今回のオープニングプログラムは16日間に及び、バンド外部の者がセレクターとして関わり、出演者を決めるプログラムも盛り込まれています。
9月25日の公演では、メディアアートの国際的な祭典「アルス・エレクトロニカ2013」で準グランプリを受賞したSjQを含む2バンドの出演公演となりました。
まずは空間現代の演奏からスタート。
普通のエイトビート等とは違う、変拍子にも思えるドラムから始まり、ギター、ドラムと音が重なっていく・・・永遠と続くと思われるその音楽は観客をトランス状態にさせ、徐々に彼らの音楽世界に引きずりこまれていきます。
演奏される曲は、ふと即興なのかと思いましたが、ちりばめられた「キメ」の部分が素晴らしく、すべてが計算され作られたものであり、練習の賜物であると気づかされます。彼らの音楽ジャンルは、変拍子や転調を多用した複雑な構成である「プログレ」(「プログレッシブ・ロック」)のジャンルに分類されることもあるそうですが、この一見複雑な楽曲は過去に作った曲を一度解体して違う曲の一部をつなぎ合わせるなどして再編成させたものだそうです(9/17アフタートークにて)。
佐々木敦氏、三浦基氏によるアフタートークの様子
今回のオープニングプログラムでは、彼らと同年代、それ以下の若手アーティストも多く参加していますが、山本精一やPhewといった80年代ごろからのパンク、ニューウェーブ、ノイズなどをけん引してきた人々がラインナップに上がってきています。空間現代の音楽が、ただ新しいこと斬新であるということにだけ目を向けているミュージシャンではなく、地に足ついていて、どこか、少し懐かしい感じを受けたのは、そういった時代ごとに先鋭的だといわれてきた音(しかしながら、現代でも決して古いものという訳ではない)へのオマージュのようなものを持っていると感じられたからかもしれません。
ミュージシャン自らが拠点を作り、制作するだけでなく、様々なジャンル・世代の人々やその周辺にあるものとの接点をもっていこうという動きは、閉鎖が続くライブハウスの文化とはまた違う形において、今後、関西の音楽シーンに新たな展開をもたらすもののようにも思いました。
「YPY+YAMAT」LEDを使った装置の設営時の様子
大阪を拠点とするドラムデュオ「ダダリズム」
アーツサポート関西 事務局 柳本牧紀