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【視察報告】EGGORE「ネリヤカナヤ」(演劇)
2017年2月17日

H28年度 助成対象事業・視察報告

EGGORE「ネリヤカナヤ」

舞台上に2人の女性ダンサー、余根田三奈と蜜柑(EGGOREのサブグループ「描く式」メンバー)と本公演の主体EGGOREの音楽を担当するギターの築山建一郎、パーカッションのアキーラサンライズ、今回メンバーとした加わったシタールのヨシダダイキチ。

リズムが刻まれ、女性たちは小刻みに動き出します。やがて神が現れるかのように鉄秀が登場し、舞台上の黒いカンヴァスに、自らの手を筆代わりに蛍光塗料で絵を描き始めます。

最初は顔のように見えたその絵は、次第に植物や動物などに姿を変え、消えて、また生まれて変化する輪廻転生を繰り返していきます。

EGGORE2

 

舞描という、絵筆を使わず、絵具を手に付けて全身で絵を描く独特な表現方法で独創的な舞台を作り出す鉄秀。今回の舞台は「ネリヤカナヤ」という、奄美大島の言葉で「根の来る彼方」を意味する言葉から発想を得た作品です。

圧倒的な迫力で奏でられる音楽。音に合わせて描いているのか、音楽が合わせているのか判断しがたくもそれぞれが即興的であるようにも見え、予測不能な「ネリヤカナヤ」の世界に引きずり込まれていきます。

絵というわかりやすい要素が介在することで物語を想像することが可能なである一方、電子音楽とシタールやジャンベといった民族楽器を使った音楽の要素が舞台上のイメージを渾然一体となって見る者に迫ってくる様は、違うベクトルに放たれようとしている力と力がぶつかりあうようでもあり、舞台の高揚感があがっていきます。

助成申請書にも「EGGOREで使用されている光の絵具は、ゲーム的色彩を放ちます。その色彩を肉感で踊り描くことで、モダン/プリミティブが融合した世界観を演出しています」と書かれているように、音楽も含め作品すべてにおいて、現在における原始―手業のようなものを感じとることができます。

EGGORE1

舞台を見終わった後は、技術的にも表現としても一流の音楽に圧倒されっぱなしで、逆に「舞描」自体に対して「もう少し身体表現として観せた方がよいのでは?」というような感想を持ちましたが、後ほど、舞描の動きはかなり計算されたもので、一連の流れや足の運びまで計算されたものであり、描いていない腕の動きや顔の向き、描く手を見るか見ないかなどを吟味しながら踊りすぎず、ただ描くだけでもなく、「演出」という要素が介入して生まれるものであると知り、単に舞台上の高揚感だけで即興的に行われるものではない、計算された中での作品演出として完成度が高く、評価されるべきだと思いました。

アーツサポート関西 事務局 柳本牧紀