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【サポーターの方限定:パトロンプログラム】「國府理『水中エンジン』REDUX」
2017年11月1日

パトロンプログラム

現代美術作品の保存・修復や再制作を問う

國府理「水中エンジン」再制作プロジェクト 実行委員会

「過去の現在の未来2 キュレーションとコンサベーション その原理と倫理

 

7月に京都のアートスペース虹で行われた「國府理 水中エンジン redux」。今回は兵庫県立美術館で行わるシンポジウムのご案内です。

「水中エンジン」とは、2014年に不慮の事故で急逝した国府理が生前手掛けた、水没させた軽トラックのエンジンを水中で稼働させるという作品で、非日常的な不可能性の逆転や、水中で稼働する熱機関としての原子力発電を想起させるものでもあります。インディペンデントキュレーターの遠藤水城の呼びかけにより組織された國府理「水中エンジン」再制作プロジェクト実行委員会は、当時の資料などを下に、関係者の手によってこの作品を再制作し日本各地で展示を行っており、 展示を重ねるごとに、現代美術作品の保存・修復や再制作に関連して生じる作品の正当性の根拠、保存対象とすべき物質・現象の理想と現実、再制作過程の記録の重要性とその価値づけ、活動記録のアーカイヴの可能性などを問いかける取り組みとなりました。これは、個人の特定の作品の再制作を試みるというプロジェクトにとどまらず、今日の美術館が取り組むべき、より普遍的な課題を明らかにするものともなっていることから、今回のシンポジウムへと至りました。

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開催場所は2002年、阪神・淡路大震災の復興のシンボルとして、当時の日本ではまだ多くなかった「保存・修復部門」が置かれた兵庫県立美術館。國府氏の作品が2011年の東日本大震災の経験を踏まえたものであることを考えあわせたとき、本シンポジウムを同館で行うことの意義は一層重いものとなります。

シンポジウムには保存・修復の専門家や美術館学芸員、研究者が登壇し、それぞれの立場や視点からディスカッションが行われます。

 

パトロンプログラム実施要項

対   象:   シンポジウム

「過去の現在の未来2 キュレーションとコンサベーション その原理と倫理」

※上記のほか、11/21~29の間、関連展示があります。

日   時:  11月23日(木・祝) 13:30~17:00

(展覧会会期:11月21日(火)~29日(水))

場  所: 兵庫県立美術館 ミュージアムホール

(兵庫県神戸市中央区脇浜海岸通1丁目1−1)

アクセス:  阪神「岩屋」駅から南に徒歩8分、JR神戸線「灘」駅南口から南に徒歩10分

定   員:  特になし。どなたでもご自由にお越しください。

 

【サポーターの方限定:パトロンプログラム】野原万里絵 ・下町芸術祭「Dialogue on the Borderline」
2017年11月1日

パトロンプログラム

多様な考え方を顕在化する試み

野原万里絵

下町芸術祭「Dialogue on the Borderline」

 

8月に新潟県で行われた小須戸ARTプロジェクト2017での個展 「黒を巡る話」に続く、岩井コスモ証券ASK支援寄金の助成アーティストの一人、野原万理絵の作品が展示される関西でのグループ展をご紹介します。

「Dialogue on the Borderline」というタイトルのこの展覧会は、神戸市長田区で2015年始動した「下町芸術祭」の一つのプログラムとして行われます。

阪神・淡路大震災から20年目の年に生まれた「下町芸術祭」は、空き家や店舗、空き地や路地、劇場や旧小学校など、下町の魅力あふれる場所を舞台に現代アート作品の展示やパフォーマンスを展開するというもので、今年で2回目の開催となります。野原さんの展示のほかに美術家の森村泰昌さんと「下町とはなにか?」をテーマに作家自身の視点から真実とフィクションを織り交ぜた物語を3年のプロジェクトとして行う「森村泰昌 下町物語2017~2019」やアジア・国内からアーティストを招聘して作品を制作・上演する「KOBE-ASIA Contemporary Dance Festival#4」などが平行して行われます。

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「Dialogue on the Borderline」の展示会場は、ギャラリーなどのホワイトキューブではなく、コミュニティスペースや路地、オルタナティブスペースなど公共性が高い場所が使用され、期間中その空間は様々な人々の思想や思考が交わる「ボーダーライン(境界線)」となります。その境界線上で、作家や鑑賞者など、様々な人々が作品制作に関連するにとどまらない会話や交流が生まれることで、社会で起きる事象に対しても多様な考え方があることを顕在化することを試みるプロジェクトです。

是非この機会に、「下町」や「アート」を多様な方向から楽しんでみてはいかがでしょう?

 

パトロンプログラム実施要項

対   象:   「Dialogue on the Borderline」

※下町芸術祭の詳細はこちら→https://www.shinnagata-artcommons.com/

日   時:  11月3日(金・祝)~25日(土) 11:00~17:00

場  所: 兵庫県神戸市長田区南部/駒ケ林エリア

アクセス:  地下鉄海岸線「駒ケ林」駅 周辺

定   員:  特になし。どなたでもご自由にお越しください。

 

【サポーターの方限定:パトロンプログラム】上町台地の歴史と未来展望実行委員会 「寺社から日本の未来はみえるか?」
2017年11月1日

パトロンプログラム

 

四天王寺創建から都市・産業・文化の未来を語り尽くす

上町台地の歴史と未来創造シンポジウム2017

「寺社から日本の未来は見えるか?」

四天王寺は593年に聖徳太子が建立した、日本仏法最初の官寺です。伎楽や能楽などの芸能文化の原点と言える場所で、建築・工芸・医療福祉・教育・観光などの現代産業もここからからはじまりました。
今回紹介するシンポジウムは、そんな四天王寺のある「日本最古の門前町」上町台地を中心としたさまざまな観光・文化・産業の歴史を発掘し、新時代に向けたイノベーションと次世代都市創造について、多方面から議論し提言するシンポジウムです。

シンポジウムは2部からなり、第1部は「大阪アースダイバー」の著者である中沢新一さんの基調講演と、観光・歴史、文化・くらし、職人・産業の3つのテーマそれぞれで議論しあう分科会、パネルディスカッションで構成され、第2部は中世の上町台地を舞台にした、講談とバロックの創作音楽絵巻を旭堂南左衛門さんとテレマンアンサンブルが公演します。

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上町台地を様々な視点から見直すことで、日本の未来も見えてくるのでは?どうぞお楽しみください。(詳細は、http://uemachidaichi.com/

 

パトロンプログラム実施要項

対   象:上町台地の歴史と未来展望実行委員会「寺社から日本の未来はみえるか?」

日   時:11月24日(金)

第1部 13:30~17:00

第2部 17:30~18:30

場  所:第1部 四天王寺本坊客殿

第2部 四天王寺五智光院〈重要文化財〉

(大阪市天王寺区四天王寺1-11-18)

アクセス:地下鉄谷町線「四天王寺夕陽丘」から徒歩5分、地下鉄御堂筋線、谷町線・JR「天王寺」駅より徒歩約12分

定   員:10名(1部、2部のみの参加も可能)

応募方法:お名前、住所、電話番号(携帯番号)、1部・2部(もしくは両方)の参加希望をお書き添えの上メールにてask@osaka21.or.jp までお送りください

 締  切:1110日(金)必着

※応募多数の場合は抽選とさせていただきます。

【サポーターの方限定:パトロンプログラム】「武生国際音楽祭2017」
2017年8月10日

パトロンプログラム

旧・新ウィーン楽派からコンテンポラリーまで

武生国際音楽祭推進会議

「武生国際音楽祭2017」

現代音楽の作曲家であり指揮者として世界的に活躍している細川敏夫氏を音楽監督に、ピアニストの伊藤恵氏をコンサート・プロデューサーに迎えて行われる「武生国際音楽祭」。今年で17回目となる同音楽祭は、国内外から精鋭の音楽家たちが越前市に一堂に会して、現代音楽、伝統音楽、クラシックと幅広いプログラムを8日間にわたって行うもので、国内有数の音楽祭として高い評価を得ています。

今年は「旧・新ウィーン楽派からコンテンポラリーへ」をテーマに、室内楽を中心としたクラシック音楽から世界初演を含む現代音楽までが、様々な形式で越前市内の文化センターや会館、お寺などで開催されます。中にはダンスパフォーマンスや生け花など、ジャンルを超えたつながりもあり、新しい音楽創造を目指す意欲的なプログラムとなっています。

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今回のパトロンプログラムは、8日間にわたって行われるすべてのプログラムを対象に合わせて5名様をご招待いたします。

「おそらくお客さんの中で最もこの音楽に感動しているのは、音楽監督の僕自身なのだ」と語る音楽監督の細川氏が「武生は、音楽の感動が溢れる音楽祭である」と述べるように、地元の市民や音楽家同士が、お互いを聴きあい、感動しあい、刺激しあい、自分の音楽に集中する環境が生まれます。地方で生まれ、長年にわたり市民の手で育まれてきた武生国際音楽祭をお楽しみください!

プログラム詳細は添付のプログラムか音楽祭ホームページよりご確認いただけます。

http://takefu-imf.com/

 

パトロンプログラム実施要項

対   象: 武生国際音楽祭2017

日   時: 9月10日(日)~9月17日(日)

場  所: 各会場(福井県越前市高瀬)

アクセス: JR北陸本線「武生」駅より

(現地までの交通費および宿泊費等は自己負担でお願いいたします)

定   員: 各5名

応募方法:  希望のプログラム名(添付のチラシかホームページをご確認ください)、お名前、住所、電話番号(携帯番号)をお書き添えの上メールにてask@osaka21.or.jp までお送りください

締  切:  828日(月)必着

※応募多数の場合は抽選とさせていただきます。

 

【平成29年度助成事業】野原万里絵 個展のお知らせ
2017年8月3日

小須戸ARTプロジェクト2017「黒をめぐる話」


アーツサポート関西 平成29年度公募助成の対象者、野原万里絵さんの個展が新潟市で開催されます。

個人的なルールを設定して作成した定規や型紙などの「型」を用いたワークショップを行い、他人の意思や偶然性を取り入れながら絵を描くという手法で作品づくりをしている野原さん。

この展覧会では2016年から2017年にかけて日本各地で制作した型紙約1000枚と、それらを用いて新潟に住む人々たちと描いた幅18m×高さ3.5mの木炭画も展示されます。

野原さんは、作者自身の意思と他者の意思が混在するプロセスを考案しながら、個人の制作活動にとどまらない、他人とのコミュニケーションを通して生まれる絵画の可能性を探り続けています。

高い将来性を備えた関西の若手芸術家支援を目的とした「岩井コスモ証券ASK支援寄金」の助成対象者である、野原さんの今後の活躍にも注目です。

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小須戸ARTプロジェクト2017
野原万里絵個展 「黒をめぐる話」

<期間> 2017年8月15日(火)〜 8月27日(日)10時〜17時
※月曜休館、最終日は14時まで開館
公開制作期間:8月15日(火)〜19日(土)

<会場> 新潟市新津美術館 市民ギャラリー
新潟市秋葉区蒲ヶ沢109-1 (花と遺跡のふるさと公園内)
電話:0250-25-1300

<入場料>無料
<主催> 小須戸コミュニティ協議会
<共催> 新潟市新津美術館
<助成> アーツサポート関西
<協力> 新潟市立小須戸中学校、城星学園
<デザイン>高橋静香

その他、新潟市小須戸町内の、町屋ギャラリー薩摩屋・カフェゲオルク・町屋カフェわかば・栄森酒店など、小須戸商店街のギャラリーや店舗でも、同時期に作品を展示しています。(→店舗での展示は11/5までです!)

※詳しくは、町屋ギャラリー薩摩屋のホームページをご覧下さい。

 

【視察報告】一般社団法人HMP「アラビアの夜」(演劇)
2017年6月27日

H28年度 助成対象事業・視察報告

エイチエムピー・シアターカンパニー「アラビアの夜」

助成対象の「アラビアの夜」は、2014年に初演され、演出の笠井友仁が平成26年度文化庁芸術祭新人賞を受賞した作品の再演です。原作はドイツの劇作家ローラント・シンメルプフェニヒの現代戯曲。エイチエムピー・シアターカンパニーは、海外の同時代の戯曲の上演にも取り組み高い評価を得ています。

5人のモノローグが絡み合う物語で、セリフのやり取りを軸に展開するストーリーではなく、自己のつぶやきに着目した作風となっています。「語りの演劇」といわれるこの手法は、近年ヨーロッパで注目を集めているもので、俳優が場面・描写も含めて「物語る」という原初的なパフォーマンスによって演劇の役柄が次々と示されていきます。

会場となったのは、インディペンデントシアター1st。もともと純然たる劇場ではなく、利用する劇団・アーティスト、観客の意見を受け止め、必要な部分、可能な場所から改装を重ね続け、進化し続けているスペースです。進化といえば、この「アラビアの夜」も同様です。2013年4月と7月に原作のリーディングを重ね、翌年11月に上演。当時はAチームとBチームに分かれての連続上演となりました。Aチームは戯曲をあまりいじらず、Bチームでは場所や人物をベルリンから一気に大阪へ移しての演出となりました。これを受けて演出家の笠井氏は平成26年度文化庁芸術祭新人賞を受賞、劇団としても新たな試みの第一歩となったようです。初演から3年、進化を遂げてこの度の上演となりました。今回もチームに分かれての連続上演です。

視察者は「アラビアチーム」しか観劇できなかったのですが、台詞、場所や登場人物は同じであるが視点を違えての演出となり、全く違った作品として仕上がったようです。
arabia-74アラビアチーム

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役者はステージ中央あたりで、ほぼ動くことはなく、セリフを言い終わっては静止し、次に別の役者が台詞を発するといった演出でした。大道具や小道具はなく、しかしながら、アパートの上階から階下へ降りていく様子や張り巡らされた水道管の様子、部屋の間取りなど、流れる空気までもが役者のモノローグによって克明に描写され、その情景が目に浮かぶようでした。

戯曲自体が現実とファンタジーの境が融解したものであることと、舞台上に何もないという演出が相まって、更に幻想的な仕上がりになり、何とも言えない心地よさが漂いました。(物語はシリアスである)

必要以上に詳細なト書きが、すべてそのまま台詞となって役者が語り、しかもそれが断片的に同時進行で重ねられていく本公演では役者の力量も問われるものになったと思われます。ベテランがそろうアラビアチームはチーム力を、若手中心で組まれたナイトチームではそれぞれの個性が光る公演になったようです。

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戯曲そのものも力のある魅力的なものですが、演出家の視点や実験的な試みにより、物語が多面的にとらえられるという演出を一つの劇団が同時に上演するというこの手法は、見せる方だけでなく、観客にとっても今後の演劇の新たな方向性を模索できるものになったと思われます。

アーツサポート関西 事務局 柳本 牧紀

【視察報告】特定非営利活動法人劇研「走りながら眠れ」(演劇)
2017年6月27日

H28年度 助成対象事業・視察報告

特定非営利活動法人劇研「走りながら眠れ」

特定非営利活動法人劇研は、スペースの運営をディレクター(芸術監督)が中心となって行う体制をとっており、2014年より、劇作家で演出家のあごうさとしが就任しています。

助成対象となっている公演は、平田オリザ作、あごうさとし演出による「走りながら眠れ」で、大正時代のアナキスト、大杉栄とその妻の伊藤野枝の最期の2か月間を描いた会話劇です。演ずるに難いこの作品を、あえて俳優ではなく2人のダンサーが演じるという、実験的なものになりました。

会場となった「アトリエ劇研」は1984年に館長・波多野茂彌の自宅を改装し「アートスペース無門館」としてオープンした小劇場で、京都小劇場の草分けとして30年以上にわたり多彩な舞台人を多く輩出してきました。

今回の公演については、あえてダンサーである2人を起用し、しかも会話劇として成立させていくという、興味深いものでした。

演出を手掛けるあごう氏も公演前に「ダンサーの身体表現を目指すのではなく、ダンサーの身体を資源として、粛々と、会話の演技でたちあげてみようと思う」と述べていました。

さて、幕が上がり、本来ダンサーである2人の「芝居」が始まりました。

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特に何が起こるわけでもなく、静かに淡々と物語は進みます。舞台上の2人はダンサーであるにもかかわらず、いわゆる身体的な技術を用いた表現は一切なく、ただただ会話が繰り返されるのみです。

当時とても異質な人物として周りから見られていたであろう舞台上の大正時代のアナキストとその妻の様子がとてもほほえましく描かれ、キュートで愛おしく思いました。川瀬演じる伊藤の目には時折鋭さも覗き、不思議な距離感がある2人の関係性や不穏な社会の空気が示唆されます。

特に細かい演出や台詞回しなどがあるわけでもなく、日常が繰り広げられているだけにも関わらず、人間性を掘り下げていくような表現ができたのは、実は、ダンサーの身体の所以なのではなかったのだろうかと思いました。ゆるぎない身体であるからこそ、そこから発せられる台詞が、時には鋭く、時には柔らかく、しかし同時にはっきりと観客に届けられ、微妙な感情のゆらぎまでもがそれに連動し伝わってくるからではないでしょうか。

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最近、ダンサーが俳優として芝居に登場するということはしばしば目にしますが、これほど、ダンサーらしくなく、しかし実はダンサーらしい(身体が作られていないとできない)演出に、今後の演劇の可能性を感じました。

アーツサポート関西 事務局 柳本 牧紀

【サポーターの方限定:パトロンプログラム】「國府理『水中エンジン』REDUX」
2017年6月14日

パトロンプログラム

再生不可能の可能性を問う

國府理「水中エンジン」再制作プロジェクト実行委員会

「國府理『水中エンジン』REDUX」

2014年に不慮の死を遂げた國府理が発表した「水中エンジン」を再制作、発表するプロジェクトです。

2012年に発表された本作品は、福島第一原発の事故から影響を受けたもので、國府が愛用していた軽トラックのエンジンを水中に沈め稼働させるというものです。エンジン音とともに対流が可視化されると同時に展示空間の外まで敷設されたマフラーから廃棄ガスが排出されます。

当時から完成していないのではないかとすら思えるほど、脆く、壊れやすいもので、度重なるメンテナンスが必要なものでした。今回の再制作においては、作者の意図を踏まえながら忠実に再現するといったことは不可能に近く、しかしながら、作品が明らかにする「不完全さ」やその有り様が現代社会をそのまま示しているのではないか、と問いかけるプロジェクトとなっています。

このプロジェクトは作品展示のみならず、資料の開陳をはじめ、識者によるトークイベントなどを通して、この「水中エンジン」という作品およびこの作品が喚起する「状況」とは何かをひも解きます。震災後の芸術作品の中でも白眉であるといわれるこの作品を、この機会にぜひご覧ください。

https://engineinthewater.tumblr.com//

水中エンジン(表) 水中エンジン(裏)

パトロンプログラム実施要項

対   象: 國府理「水中エンジン」REDUX 展示、ゲストトークなど

展示|前期 7月4日(火)~16日(日)

後期 7月18日(火)~30日(日) 11:00~19:00

※前期・後期で展示内容が大幅に異なります。

※休館日・月曜日

場所:アートスペース虹(地下鉄「蹴上」駅より徒歩3分)

関連イベント|

ゲストトーク(詳細は添付チラシをご確認ください)

①7月8日 (土)

②7月15日(土)

③7月22日(土)いずれも19:00~20:30

クロージングパーティー

7月29日(土)18:00~20:00

定   員:クロージングパーティーのみ5名(ご招待)

応募方法: メールにてお名前、住所、電話番号(携帯番号)をお書き添えの上、

ask@osaka21.or.jp までお送りください

締  切:  719日(水)

【サポーターの方限定:パトロンプログラム】アンキャッチャブル・ストーリー展実行委員会「アンキャッチャブル・ストーリー」
2017年5月29日

パトロンプログラム

複数のストーリーが重なり合う空間

アンキャッチャブル・ストーリー展実行委員会 「アンキャッチャブル・ストーリー 」


展覧会タイトルのとおり「つかまえられないストーリー」をテーマに、絵画、インスタレーションなどの異なる表現方法を持ち、年代もさまざまな3人の作家によるグループ展です。

完全に分かることはないはずの「他人のこと(ストーリー)」をあたかも分かったかのように、そして分かりやすく表現することにより発生する齟齬や脅威に対して、キュレーターの武本彩子が、3人の作家と共に、作品を通じて疑問を投げかけ表現していくことに挑戦します。会場は通常のギャラリースペースではなく京都の築100年を超える「瑞雲庵」。古民家ならではの環境を活かし、作家・作品・建築物・鑑賞者の複数のストーリーが重なり合う空間を作っていきます。

参加アーティストは、物質に言葉や文章を加えて物語を生み出すインスタレーション作品を創作する牛島光太郎、一見なんの変哲もないながらも、どこか印象に残る場面を絵画で表現する田中秀介、言葉やそれに付随する概念を出発点に、ドローイング、写真、旅やリサーチ、パフォーマンスと様々な方法で思考を展開している阿児つばさ。

作品の要素に言葉を用いる彼らの手法は、リアリティのある媒体を用いながらも分からない何かを安易に捕まえるというようなことをせず、むしろどこまでも逃そうとするような試みです。

今回ご案内するのパトロンプログラムは、これらの作品を少しずつひも解いてゆく、キュレーターによるギャラリートークをご案内します。まだ知名度が高いわけではないが、意欲的な活動を続けている作家たちのアンキャッチャブルなストーリーをキャッチしにきてください。

https://www.n-foundation.or.jp/

アンキャッチャブル・ストーリーアンキャッチャブルストーリー(裏)

 

パトロンプログラム実施要項

対   象: 「アンキャッチャブル・ストーリー」/キュレーターによるギャラリートーク

※上記のほか、展示期間中に様々な関連イベントがあります。

日   時:  6月17日(土) 15:00~16:00

(展覧会会期:6月11日(日)~7月17日(月・祝))

場  所:  瑞雲庵(京都市北区上賀茂南大路町62-1)

アクセス:  京都駅から京都市バス9号系統「上賀茂御薗橋」下車 徒歩15分

阪急烏丸駅・河原町駅から市バス4号系統「上賀茂神社前」下車 徒歩10分

市営地下鉄北大路駅から京都市バス37号・北3号系統「上賀茂御薗橋」下車 徒歩15分

定   員:  特になし。どなたでもご自由にお越しください。

※このほか関連イベントにつきましてはホームページをご参照ください。

【サポーターの方限定:パトロンプログラム】点の階「・・・」
2016年12月8日

パトロンプログラム

世界初の・・・囲碁劇?!

点の階 「 ・ ・ ・ 」


劇作家の久野那美が、自らの戯曲を自身で演出するプロデュース集団「階」。戯曲を公開したうえで出演者を募り、公演を行うという方法で平成9年より活動を続けています。毎回新しい気持ちで作品に向かうためにと、公演の度に上演ユニット名を「~の階」というように更新していおり、今回は「点の階」という名での上演となります。

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「・・・」は点転という囲碁をモチーフにした架空の盤上競技を巡って、「勝つこと」「負けること」「終わること」「終わらせること」についての物語です。「対面して競う二者」及び「それを外側から垣間見る者」のそれぞれの関係性に焦点をあてて新しい関係性を模索しています。

劇作家の久野は、言語感覚と解釈の幅の広い多重構造の物語に定評がある劇作家です。2015年度には日本最初の演出家対象のコンクール「利賀演出家コンクール」において、台詞に対する繊細な取り組みに対しての評価から奨励賞を受け、演出家としても注目されています。

今回、囲碁の棋士を統括し、近畿を中心として棋戦や囲碁普及などの活動を行っている関西棋院からも協力を得て「点転」の世界をより深く掘り下げます。「ことば」を巡る表現方法について時間をかけ試行錯誤した点の階の公演をお楽しみください。

みなさまのご参加をお待ちしております。

http://floor.d.dooo.jp/ten/

 

 パトロンプログラム実施要項

対  象:  点の階「・・・」

日  時:

1)2017年1月12日(木)15:00
2)2017年1月12日(木)19:00
3)2017年1月13日(金)16:00
4)2017年1月15日(日)17:00

※開演の20分前に開場、60分前より受付開始

場  所: 京都芸術センター

アクセス:   阪急京都線「烏丸駅」より徒歩5分/地下鉄東西線「烏丸御池駅」より徒歩10分

定   員:  各回5名程度

締  切: 1221日(水)

【視察報告】クールジャパン・アダルトロック(音楽)
2016年10月24日

H28年度 助成対象事業・視察報告

平井孝明「クールジャパン・アダルトロック」

大人たち(社会人)たちの熱いロックイベント「クールジャパン・アダルトロック」の会場は、心斎橋にあるFootRock&BEERSという、サッカー鑑賞BAR、ライブハウスほか様々なイベントを行っているスペース。スポーツ界、音楽界、文化人、メデイア・放送局関係、イベンター、学生企画団体、企業家様々な人たちが日々集まってきているようです。

普段は、サッカーのゲームが鑑賞できるBarであったり、結婚式などの二次会に使われたり、オフ会イベントに使用されたり、ライブハウスになったりと用途は様々です。

今回の「クールジャパン・アダルトロック」は、月刊音楽フリーペーパー「JUNGLE LIFE」を手掛ける平井孝明氏が仕掛け人となって「音楽的にパイオニアの文化が根付いている関西で、関西のアダルトロック・バンドが世界に認知される機会を広げ、関西のポテンシャルを発揮するように」とはじまり、今回で5回目を迎えます。ロックのライブとなるとオールスタンディングのイメージですが、「アダルトロック」だけに、50人程度の客席が設けられていました。演者はゲスト以外は40歳をゆうに超えている(失礼)。ロック、アコースティック、R&B、ソウル、ハードロックなど様々なジャンルの音楽を聞かせてくれました。

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ロックイベントのMCならバンディ石田です

申請書に「音楽を通じて、演奏者、観客が「人生の豊かさ」を享受できるようなイベントを目指します。」とあるように、演奏の安定感からの「音の豊かさ」を感じるだけでなく、中年の、社会の酸いも甘いも経験してきたと思われるそれぞれの演者が、ステージ上では輝きを放っており、まさに「人生の豊かさ」を体験することができるイベントでした。

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(左上)おやじとは言わせませんよ。このグルーブR-CALL/(左下)澄みきった歌声ウンPapaルンPapa/ (右上)捧腹絶倒!!バカテクのギターVep Halen/(右下)浪速のファンク・ブルースならこのバンドですBLACK LIST REVUE

社会人であり、アマチュアではあるがミュージシャンとして活動する人々を対象としたプロジェクトとして「クールジャパン・アダルトロック」を開催し続けているというのは、若者がメジャーデビューを目指すとことではなく、また内輪のノリで発表会を行うのでもないという、アマチュアバンドの音楽シーンに新たなムーブメントを作っていくようにも思われます。

今回のアーツサポート関西の助成対象プログラムとしては、イベントの開催とそのライブ映像などを撮影のうえアーカイブ化していくというものもあり、双方が機能して今後も同イベントが続いていくことが、関西のインディーズ音楽シーンのプラットホームとなり、次世代へつなげていくべく更なる活性化を図ることとなると期待されます。


アーツサポート関西 事務局 柳本牧紀


 

 

【サポーターの方限定:パトロンプログラム】EGGORE「ネリヤカナヤ」
2016年10月19日

パトロンプログラム

舞踏的な身体の動きがそのまま絵画に直結する

EGGORE 「ネリヤカナヤ」


前衛ダンス的パフォーマンスによって“ライブペイント”という形態で2007年より表現活動を行う鉄秀。ライブでの高揚感を全面に出し、絵筆を使わず絵具を手に付け、体全体で描く彼の独創的なパフォーマンスは、全身で動く姿が舞踏のようだと評されることから「舞描(ぶびょう)」と呼ばれており、舞踊の世界だけでなく、演劇、美術などの多方面から評価を得ています。

今回、ご紹介するプログラムは、鉄秀ほか舞台音楽などにも携わる現代音楽家・築山建一郎、パーカッション奏者のアキーラサンライズのユニットEGGOREの「ネリヤカナヤ」です。

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「ネリヤカナヤ」とは奄美大島の言葉で「根の来るかなた」を意味し、「いにしえより奄美の人々は海の彼方にネリヤカナヤと呼ばれる楽園があり、人々に豊穣をもたらす神がいると信じていた」とも言われているそうです。自らのルーツである奄美大島に伝わる言葉を軸に、日本の知られざるシャーマン=ユタの感性を内在させた作品です。

2015年にはイギリスでも公演を行い、高い評価を得た同作品。今回は新たに奄美大島の音に精通するシタール奏者のヨシダダイキチを加え、より密度の高い音を表現します。また、鉄秀が行う「舞描」をダンス的舞踏パフォーマンスとして成立させるべく2015年よりスタートした別のライブペイントユニット「描ク式」からもメンバーを選出、より広がりのあるパフォーマンスが見られることでしょう。

みなさまのご参加をお待ちしております。

 

パトロンプログラム実施要項

対  象:  EGGORE「ネリヤカナヤ」

日  時:  11月5日(土)開場18:30 開演19:00

11月6日(日)開場14:30 開演15:00

場  所: 大阪市立芸術創造館
〒535-0003 大阪府大阪市旭区中宮1-11-14

http://www.artcomplex.net/art-space

アクセス:   大阪市営地下鉄谷町線「千林大宮」駅から徒歩10分
京阪本線「森小路」駅から徒歩10分

定   員:  各5名程度

締  切: 1031日(月)

【インタビュー】極東退屈道場 主宰:林慎一郎さん
2016年10月17日

 林 慎一郎さん(極東退屈道場)インタビュー


今年アーツサポート関西は、演劇ユニット「極東退屈道場」を助成しています。伊丹アイホールで10月28日から始まる助成対象事業「百式サクセション」の稽古場にお邪魔して、主宰の林慎一郎さんにお話を聞いてきました。

 

――― 演劇をはじめるきっかけは?

林: 京都大学3回生の時、知り合いから誘われて劇団の立ち上げに参加したのがきっかけです。二回目の公演以降、たまたま僕が脚本を書くことになり、ついでに演出もする、という感じでした。その当時の京都には面白い演劇がいろいろあって、見てはいたのですが、やりたいと思ったことはなく、たまたま友人が誘ってくれたので参加してみたのがきっかけです。

img_2060 極東退屈道場 林 慎一郎さん

 

――― そして「極東退屈道場」を2007年に立ち上げられました

林: メンバーが30歳代に入り考え方もいろいろ出てきたので、この最初の劇団は一旦解散となったのですが、僕自身は台本を書くことに興味が出てきた時期で、まず台本を書いて、その作品を上演するために俳優を集めるユニット形式で演劇を再開したのがこの「極東退屈道場」です。

 

―――― 「極東退屈道場」として目指しているスタイルのようなものはありますか

林: 「極東退屈道場」として書いた4作目に「サブウェイ」という戯曲があるのですが、思いがけずOMS戯曲賞をいただくこととなり、それをきっかけに自分のスタイルを自覚するようになりました。まず基本的に都市論なんですね。僕は北海道の函館出身で、大学で京都に来てそれから大阪に住み、都市の環境に住んで20年以上になります。たまに故郷に帰ると、故郷の喪失感や異邦人的な感覚を覚えます。そうしたことを手掛かりに都市の風景をいろんな視点で描こうとしています。

極東退屈道場「サブウェイ」撮影:石川隆三 極東退屈道場「サブウェイ」撮影:石川隆三

 

――― 今年6月に亡くなられた維新派の松本雄吉さんと、今年の2月、林さんが脚本を、そして演出を松本さんが担当されて豊中市の依嘱による演劇「PORTAL」が上演されました。そこでも都市の風景がテーマになっていたように思います

林: 維新派のヂャンヂャン☆オペラと呼ばれる変拍子のリズムの使い方などについて、松本さんと一緒に話し合いながら作った戯曲でした。演劇で地図を表現するアイデアを松本さんがとても面白いね、と。やはりここでも都市の風景を浮かび上がらせようとしました。

 

――― 林さんの演劇にはダンスの要素もありますよね

林: 4作目の「サブウェイ」あたりからなのですが、試行錯誤しながらやっています。まず脚本があって、それを見て振付家がダンスに落とし込んでいく共同演出的な手法をとっています。言葉をどのように身体化していくか。とてもスリリングな作業ですね。

「PORTAL」撮影:井上嘉和 「PORTAL」撮影:井上嘉和

 

――― 最近の演劇の傾向として、ダンスと演劇の境界があいまいになってきているように感じます。つまり、ダンサーが俳優として台詞を言う演技をし、俳優にダンサー的な身体性を求められるといった風に。そうしたものを意識されていますか。

林: ダンスによる身体を使った抽象的な表現の先に、さらに言葉による表現の広がりがあっても良い、という考え方は出てきているかもしれません。一方、僕は演劇において、舞台にゴロンと立つ俳優の身体の存在感そのものが俳優の特権みたいな考え方が根強くあって、演出家として言葉を語る俳優に厳しく身体性を求めるということはあまりせずにやってきたように思います。これからは、ダンス的な表現技術を持つ俳優による演劇の可能性が広がってきていても良いとは思いますね。

 

――― 今回の新作「百式サクセション」は、シェイクスピアのリア王をモチーフに、都市の中で老婆を探すストーリーとお聞きしています

林: 母である行方不明の老婆を都市の中で探すというのが、縦糸のような淡いストーリーとなっていて、青空カラオケに集うさまざまな人々が登場します。莫大な遺産を持つとうそぶくおばあちゃんが百円を握りしめて青空カラオケに興じるその周辺で、いろいろなエピソードが展開していきます。

 

――― 今回の新作について「報告劇」という言い方をされています。それはどのようなものなのでしょうか。

林: これまでも僕の演劇ではモノローグを良く使ってきたのですが、一般的にモノローグとは俳優が観客に向けて話しかけるものです。それに対して、僕の場合は、見えないインタビュアーに向けて状況をまさに「報告」する形をとっています。それを今回「報告劇」と呼ぶことにしました。今回の新作では、都市が、老いていく人々を見つめる眼差しを報告していく、という内容で、そうしたモノローグの断片を繋いでいくことによって、おぼろげな作品の輪郭が立ち上がってくるような作り方をしています。

極東退屈道場「百式サクセション」稽古場風景 極東退屈道場「百式サクセション」稽古場風景

 

――― 大阪の演劇を取り巻く状況を林さんはどう見ていらっしゃいますか

林: かつてあった例えば扇町ミュージアムスクエアのようなサロン的な劇場がなくなっています。演劇人が多く出入し情報収集や交換の場になるような場がありません。いくつかの民間劇場が頑張ってくれているのですが、なかなか大きな状況を作るのが難しい。そのため、劇団の数はあるのだけれど、特に若い人などは、大きな事を避けて、こぢんまりした中で自分たちの表現を探るしかない。観客も身内だけでまかなえてしまう。それは寂しい気がします。東京にはまだ仕事になるという幻想があるように思いますが、ここ大阪に残って演劇をやるには、社会で生きることと演劇とを両立させていかねばならない難しさがありますね。

 

――― 本日は、稽古前のお忙しい中、お時間をいただき大変ありがとうございました。

「百式サクセション」の公演を大変楽しみにしております。

 

聞き手: アーツサポート関西 事務局(大島、柳本)  取材日2016年10月6日

【視察報告】燈(美術)
2016年10月13日

H28年度 助成対象事業・視察報告

濱脇奏 個展「燈」

現在、ドイツのデュッセルドルフ美術アカデミーで学ぶ、同アカデミー3回生の濱脇奏さんによる個展「燈」が、加古川市にある「あかりの鹿児資料館」で開催されました。アーツサポート関西はこの展覧会に30万円を助成しました。

濱脇さんは、高校まで神戸で過ごし、高校時代からドイツの美術大学受験を視野にいれて独自にドイツ語を学習し、高校卒業後に渡欧。そしてドイツの大学受験に挑み、見事、世界で最も重要な美術大学の一つと言われるデュッセルドルフ美術アカデミーに入学しました。この大学は、ヨゼフ・ボイスなど今日の現代美術の礎を築いた世界的に著名なアーティストを多数輩出している学校として有名で、教える教師陣も、世界の第一線で活躍するスーパースター級のアーティストがずらりと並ぶ豪華な顔ぶれです。美術の世界において海外の大学で学ぶ日本人学生は少なくはありませんが、その多くが、日本の美大を出てから大学院に転入するケースが多い中、日本の高校で語学の習得からとりかかり、学部から海外の大学で勉強する方はあまり多くはありません。それだけに濱脇さんの進路選択には、美術やご自分の将来にむけた強い信念が感じられます。

会場となったあかりの鹿児資料館は、民間企業が運営する私設の博物館で、会社の創業時にランプを取り扱ったことなどから、国内外のランプや照明器具に関する様々な資料などを多数収集・展示しています。今回の濱脇さんの展覧会は、以前、加古川の別のギャラリーで開催された濱脇さんの個展をみた学芸員が開催を持掛ける形で実現したもので、この博物館の特別展示室で開催されました。

特別展示室は、正方形の形をした50㎡ほどの広さの空間で、壁面は展示用のガラス陳列ケースで占められています。濱脇さんは、ここの壁面に絵画を掛けるわけでもなく、また、ケースに立体作品を置くのでもなく、壁面のガラス陳列ケースそのものを作品化することを考え、この場所特有の、いわゆるインスタレーションと呼ばれる空間的な作品を展示しました。

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ただ単に「燈」と名付けられた作品の構造はとてもシンプルで、腰高から天井近くまであるガラスケースの内部全体に、透明のアクリル板を設置し、その全面に黒いテープで斜方向に整然と並ぶ黒いストライプを表現しました。アクリル板の背後には、ブルーとオレンジの光を発する照明器具を配置し、その光によって陳列ケースの中で黒いストライプが空間の中に浮かび上がります。特に、ガラスケースが直角に交わる角の部分では、角を挟む左右の表面ガラスにストライプやガラスそのものが映り込み、非常に複雑な視覚的な効果が生まれます。

「展示室には、今では見かけないガラスの展示ケースがL時状に対面に配置されている。ガラスの性質上、光の差し込む方向で反射や湾曲や屈折や映り込みがおこる。それをうまく利用して、オレンジと青を対面に配置することで、青側には対面側のオレンジの光が映り込み、奥へ奥へと光が続いていき、奥行きがあるような錯覚をおこすことができる。」「床にも天井にもその光が反射するため、左右前後にあわせ天井と床の上下にまでわたる2~3倍もの広がりのある部屋が出来上がり、別世界を想像させる。」(主催者の報告書より)

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濱脇さんはこの展示のために、今年前半に日本に帰国した際、現場を訪れ、「あかり」の博物館であることの場所の意味や展示ケースの壁面で構成されている部屋の空間的特性、それに加えて、普段ドイツにいることによる時間的・作業的な制約、そして予算などを検討し、このプランを考案したということです。

視察者の印象として、まず実現可能性を前提とし、非常にシンプルな手法で極めて大きな視覚的効果を生み出している部分に、物事の多様な側面をトータルに検討・判断しながら、そこから高い表現性を導き出す、アーティストとしての思慮深さ、もしくは「懐の深さ」のようなものを感じました。そこに未熟な意識のブレはなく、ベテランの作家がその効果の余韻を自ら楽しむような円熟的な佇まいすら感じれ、この若い作家が潜在的に宿すスケールの一旦を垣間見た気がしました。

アーツサポート関西の今年度の助成の基準は、高い水準を有するアーティストを見出し、光を当てることとしていますが、濱脇さんはまさにその基準に見事に合致するアーティストとして、アーツサポート関西としても、今後大いに期待を寄せながらその活動を見守っていきたいと考えています。

アーツサポート関西 事務局 大島賛都

【視察報告】ハイライトシーン(美術)
2016年9月15日

H28年度 助成対象事業・視察報告

現代美術のグループ展「ハイライトシーン」

「ハイライトシーン」は、京都国立近代美術館の研究補佐員で美術館外でもさまざまな展覧会を手掛ける若手キュレーター平田剛志氏の自主企画により、大洲大作、中島麦、竹中美幸の3名の作家が参加して5月4日~5月22日にかけて京都のGallery PARCで開催された現代美術のグループ展です。展覧会のテーマ「ハイライト」を、さまざまな形で想起させる写真、絵画、立体作品で構成されています。アーツサポート関西では、この展覧会に30万円を助成しました。

会場となったGallery PARCは、京都の三条通沿いの繁華街の中心にある民間のギャラリーで「グランマーブル」というブランドでデニッシュを販売する会社が運営しており、最近目立ってきた京都の企業によるアート活動の一つでもあります。

会場は、コンクリート打ちっぱなしの壁面に大きな窓ガラスがつけられた変則的な空間で、そこに白い仮設壁面を建てて展示が行われていました。

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会場風景 竹中美幸の作品(右手奥)、大洲大作と中島麦の作品(左壁面)

 

写真を手掛ける大洲大作の作品は、対象を抽象的にとらえ、その色彩や形態をシンプルな要素に還元させていくような写真作品で、写真でありながら作家の造形的な恣意性が強く表れたものとなっています。中島麦の作品は、キャンバス上に細かな絵具の滴を無数に垂らしていくドリッピングによる絵画で、多様な色彩が幾重にも複雑に重なりあい、その偶然がもたらす色同士の反撥や飛沫の形態の妙などが絵画的な様相を際立たせています。

竹中美幸は、暗室で感光させた35ミリフィルムを天井から多数つりさげ、背後の大きな窓から差し込み光が淡い色を帯びて透過するスクリーン状のインスタレーション作品を展示しました。
highlight2 大洲大作 夏の光I(左)、冬の光II(右)

 

本展の作品の間には視覚的に穏やかな連携性があり、その点は評価されるべきものだと思います。一方、展覧会の解説文などで「ハイライト」という言葉を、物事の重要な部分を示すもの、および照り返された強い光という「強度」としてとらえていながら、展示作品が見せる比較的「おとなしい」印象との間に、ギャップがあるようにも思いました。

◆サポーターズ・クラブの皆様にパトロンプログラムとして参加いただける事業もあります。メールで案内しますので、興味のあるプログラムには、是非お申込みください。

公益財団法人 関西・大阪21世紀協会


アーツサポート関西 事務局 大島賛都


 

【視察報告】モンゴルズシアターカンパニー(演劇)
2016年8月4日

H28年度 助成対象事業・視察報告

暗いテーマながらもスタイリッシュな仕上がり

モンゴルズシアターカンパニープロデュース 「鼠-2016-」


モンゴルズシアターカンパニーは、特定の団員を持たず、公演ごとにふさわしいメンバーを配置するという方法で、様々な場所で公演を行うユニットです。「鼠-2016-」は2015年日本劇作家協会主催の短編演劇祭「劇王天下統一大会2015」で唯一関西代表に選ばれて上演された作品「鼠」を、若手演出家の雄―笠井友仁を迎えて長編作品として再編成されたものです。

会場は大阪市中崎町のイロリムラプチホール。入ってまずその小ささに驚かされます。舞台には大道具はなく、小さなホワイトキューブに約20名程度の客席がひな壇に設けられていました。大きな劇場では表現できなかった地下鉄のホーム下の雰囲気を演出するために、この劇場が選ばれたようです。前回の公演で400名もの来場者があったこともあり、公演は2週間に及び全18回上演されました。会場は満席。

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ストーリーは、ある春の日の午後、ラッシュ時を過ぎた地下鉄のホームでの飛び込み自殺による非常制御スイッチ起動での停電した3分後から始まります。舞台は駅のホーム下の退避場所。駅員2人の会話劇として構成されており、それぞれの駅員の関係性や過去が次々に明らかになっていきます。

エピソードを少し盛り込みすぎの感はありましたが、もともと駅員1が運転士をしていたこと、駅員2の弟が飛び込み自殺を図ったことなど、とりとめのない会話の中からそれぞれの現在・過去が浮かび上がります。そして、タイトルとなる「鼠」のエピソードも。

演出を手掛けた笠井友仁は「空間」「身体」「音」にこだわった独特の世界観をもつと評され、小さなホワイトキューブをうまくホーム下の空間へとしあげており、また文字や影が効果的に使われていました。

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公演終了後は、隣のカフェでささやかな交流の場がセッティングされており、観劇後にお客さん同士、またはお客さんと演出家、脚本家、出演者などとの意見交流ができる仕組みになっていました。

「あの場面がおもしろかった」「前回と今回では何がちがったのか?」「あの場面での演出はわざとなのか?」など、様々な会話や意見が酌み交わされていました。

鑑賞の場とこのような交流の場を同時に設けることで、様々な人々との交流や繋がりが生まれ、より演劇に対する造詣が深まることになることでしょう。

パトロンプログラムにご参加いただいたサポーターの方々も、代表の増田さんとの間に様々な会話が生まれていたようです。単にその劇団との交流だけでなく、関西の演劇界の発展にも繋がる素晴らしい試みだと思いました。

◆サポーターズ・クラブの皆様にパトロンプログラムとして参加いただける事業もあります。メールで案内しますので、興味のあるプログラムには、是非お申込みください。

公益財団法人 関西・大阪21世紀協会


アーツサポート関西 事務局 柳本牧紀

【サポーターの方限定:パトロンプログラム】コンブリ団「カラカラ」
2016年7月14日

パトロンプログラム

普遍的な名作を再構築

コンブリ団その9 Re:ブリックス「カラカラ」


2004年より緩やかな創作ペースで活動を重ねてきたコンブリ団。普段は「身近な演劇の創造」を基軸として、代表のはしぐちしんのオリジナル戯曲を上演してきた本劇団ですが、この度Re:ブリックスという新しいシリーズを立ち上げ、現代近古典を問わず普遍性の高い既存の戯曲を身近な演劇として再構築、上演します。

今回は、2014年に急逝した劇作家・演出家の深津篤史氏の初期の戯曲を、劇団ジャブジャブサーキットのはせひろいち氏を演出に迎えお届けします。

「カラカラ」は深津氏が代表をしていた、現在も大阪で活動を続ける劇団「桃園会」で1995年に最初に上演された作品です。震災後の避難所を舞台にしたこの作品には、阪神淡路大震災で被災した深津氏自身の体験も織り込まれており、20年以上たった今でも色あせず、再上演されるのに意義のある作品となっています。

作品の上演後には、アフターイベントとして劇作家、演出家をゲストに招いて「深津戯曲」のリーディングとアフタートークも開催。色あせない深津作品を様々な角度からお楽しみいただけます。

プログラムの詳細はこちら http://conburidan.blogspot.jp/2015/12/karakara.html

 コンブリ団 

パトロンプログラム実施要項

対  象: コンブリ団その9 Re:ブリックス「カラカラ」

日  時: ① 9/2(金)  開場19:00  開演19:30

② 9/3(土)  開場17:30  開演18:00

③ 9/4(日)  開場15:30     開演16:00

④ 9/5(月)  開場14:30  開演13:00

場  所:  ウイングフィールド

(大阪市中央区東心斎橋2-1-27 周防町ウイングス6階 tel:06-6211-8427)

http://www.wing-f.co.jp/access.html

アクセス:   堺筋線「長堀橋駅」⑦出口より徒歩5分

御堂筋線「心斎橋駅」⑥出口より徒歩7分

定   員:   各日2名をご招待(先着順)

申込方法:   メールにて、お名前、ご所属、希望日を書いてお申込み下さい。

ask@osaka21.or.jp

締    切:   88日(月)   

【サポーターの方限定:パトロンプログラム】濱脇奏「燈(とう)」
2016年7月8日

パトロンプログラム

ひかりの「在り方」を表現した展覧会

濱脇奏「燈」


本展覧会は、江戸から明治にかけての照明器具が展示されている兵庫県加古川市の「あかりの鹿児資料館」を会場に、現在ドイツのデュッセルドルフ美術大学に在籍している濱脇奏が、この資料館の主題である「光」を独自の視点で捉え直し、作品化した個展です。展示ケースの中でだけの展示ではなく、展示室全体を作品にする空間美術を楽しんでいただけます。

今回のパトロンプログラムでは、期間中自由にご観覧いただいたり、ギャラリートークをお楽しみいただけるよう、無料観覧券付のDMを差し上げます。

舞台美術も手掛けた経験をもつ、濱脇の意欲的な資料館との空間コラボレーションを是非ご覧ください!

濱脇奏web用

パトロンプログラム実施要項

対   象:  濱脇奏「燈」 

展覧会会期: 8/13(土)~21(日) 10:00~17:00

(15日休館、13日・20日は13:00から、最終日は15:00まで)

※在廊、ギャラリートーク 8/13(土)、/14(日)、/20(土)、21(日)

ギャラリートーク開催中は作家が会場にてお話することができます。

場  所:  あかりの鹿児資料館 〔2階特別展示室〕

(兵庫県加古川市加古川町粟津803-1)

http://www.next-1.co.jp/akari/3special.html

アクセス:   JR加古川駅より神姫バス高砂行き簡易裁判所南下車

定   員:  10名(先着順)

申込方法:   メールにて、お名前、ご所属を書いてお申込み下さい。 ask@osaka21.or.jp

締    切:   88日(月)

【サポーターの方限定:パトロンプログラム】モンゴルズシアターカンパニープロデュース 「鼠 -2016-」
2016年6月16日

パトロンプログラム

演劇の枠にとらわれない自由な表現形態を武器に活動するカンパニー

モンゴルズシアターカンパニープロデュース 「鼠 -2016-」ご案内


特定の団員を持たず、公演ごとにふさわしいメンバーを配置するという方法で様々な場所で公演を行うユニット―モンゴルズシアターカンパニー。

今回のパトロンプログラムでは昨年横浜市で開催された全国短編演劇コンテスト「劇王」の関西地区代表に選ばれた作品「鼠」の長編リメイク版「鼠―2016―」をご案内します。

物語は、ある春の日の午後に起こった、地下鉄のホームでの飛び込み自殺の3分後から始まります。非常制御スイッチの働いた停電した駅のホームの下で繰り広げられる駅員二人の虚構と現実の世界・・・。

演劇の枠にとらわれない自由な表現形態を武器に活動する同カンパニー主宰・増田雄の脚本を、平成26年度文化庁芸術祭の演劇部門新人賞に選ばれた演出家・笠井友仁が、更に独創的な舞台芸術へと仕上げていきます。

想像力を強く刺激する本作品の、2人の男が創り出す会話劇をお楽しみください。

モンゴルズシアターカンパニープロデュースのホームページはこちら

鼠2016_チラシomote_web用

パトロンプログラム実施要項

日  時:  7/13(水)~15(金) 開場19:00  開演19:30

場  所:  イロリムラ プチホール

(大阪市北区中崎町1-4-15 tel:06-6376-0593)

http://irori2005.com/annai.html

アクセス:   地下鉄谷町線「中崎町」駅①出口より徒歩

定   員:   各日3名をご招待(先着順)

申込方法:   メールにて、お名前、ご所属、希望日を書いてお申込み下さい。

ask@osaka21.or.jp

締    切:   74日(月)   

 

【サポーターの方限定:パトロンプログラム】平田 剛志「High – Light Scene」 ご案内
2016年5月19日

パトロンプログラム

3名のアーティストの作品における「ハイライト」に着目した展覧会

平田 剛志「High - Light Scene」ご案内


今回は、展覧会/平田剛志企画の「High-Light Scene」におけるトークショーをパトロンプログラムとしてご紹介します。

「High-Light Scene」は京都国立近代美術館研究補佐員である平田 剛志企画のもと「ハイライト」をテーマに、3人のアーティスト(大洲 大作 / 竹中 美幸 / 中島 麦)の作品を通じて光と風景について考察する展覧会です。

「ハイライト」は絵画や写真において、光の反射が最も明るく見える部分を意味する言葉。また、映像や演劇などにおいては、気を引く部分、見せ場などの一瞬のみどころを凝縮した場面を意味します。

3人の若手アーティストがどのように「ハイライト」をとらえ、表現するのか。日常や風景、写真や絵画の見方に新たな「光」を見い出す機会となることでしょう。

写真、絵画、インスタレーションなどそれぞれの作品での表現をお楽しみいただけると思います。

パトロンプログラムとしてご紹介いたしますトークショーは、企画者と3人の作家によるものです。是非この機会に作家本人から作品に対する思いをお聞きいただき、みなさまの中にある「ハイライト」を考えてみてはいかがでしょうか。

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パトロンプログラム実施要項


対  象:  「High-Light Talk」大洲 大作、竹中 美幸、中島 麦、平田 剛志によるトーク

日  時:  5/22(日) 16:00~

場  所:   Gallery PARC [グランマーブル ギャラリー・パルク]

(京都市中京区三条通御幸町弁慶石町48 三条ありもとビル

[グランマーブル]店舗内2階)

アクセス:   阪急河原町駅より徒歩10分 /三条京阪駅より徒歩10分
地下鉄東西線京都市役所前駅より徒歩3分

料  金:   無料

申込方法:   特にありません。どなたでもご参加いただけます。

※パトロンプログラムは、サポーターの方々に、助成先の団体が行う公演やコンサート、展覧会などへの無料招待、ご参加を募るものです。

 

サポーターズ・クラブ メンバーシップ更新のお願い
2016年4月20日

ASKは今年、3年目の活動に入ります。みなさまのご支援に支えられ、これまで美術、音楽、演劇、ダンス、映像、伝統芸能など様々な団体に助成金を交付してまいりました。また、助成交付と平行して行っております、サポーターの方々を助成先の公演等にご招待するパトロンプログラムも、すでに10回を数えました (※)。助成先からは、ASK助成金によって活動の質が上がった、新しい取り組みにチャレンジできたなど、感謝の声が寄せられています。

 

この取り組みを継続させていくためには、ぜひとも、みなさまのご支援が必要です。更新のお手続きのほど、よろしくお願い申しあげます。

関西でがんばるアーティストや文化を継承する方々のために、みなさまのご理解とご協力を賜りますよう、心よりお願い申し上げます。

 

※パトロンプログラムはすでに10回開催しており、仮にその全てに有料でご参加いただいた場合のチケット相当額は、お一人あたり4万円以上にのぼります。

お知らせ
2016年4月20日

お知らせ